遺産相続

遺産分割協議書は必要か?必須となる手続きや不要なケースを解説

2025.12.04

家族が亡くなり、相続手続きを進める中で「遺産分割協議書は本当に必要なのか?できれば手間を省きたい」とお考えではありませんか?

結論から言えば、有効な遺言書がある場合や相続人が一人の場合を除き、不動産や預金の名義変更をおこなううえで多くのケースで作成が原則必要となります。

この記事では、遺産分割協議書が必要な具体的なケースと不要な例外、作成しない場合の重大なリスクについて、相続の専門家がわかりやすく解説します。

相続をトラブルなくスムーズに手続きを完了させるために、ぜひ最後までご覧ください。

1.遺産分割協議書がなぜ必要なのか?

遺産分割協議書は、相続人全員が合意した遺産の分け方を証明する書類です。

相続開始後、財産は相続人全員の共有になるため、誰が何を受け取るかを明確にしなければ、預金の払い戻しや不動産の名義変更などの手続きが進みません。また、書類作成時には相続人全員の署名・実印が必要です。

相続人全員の署名・実印がある遺産分割協議書は、

  • 全員の合意が証明できる
  • 法務局や金融機関に正当性を示せる
  • 親族間の争いを防げる

という役割を果たします。

1-1.遺産分割協議書が原則必要となる主な手続き

遺産分割協議書は、財産の名義を被相続人から相続人に変更するさまざまな手続きで提出を求められます。具体的には、以下のような手続きです。

  • 不動産(土地・建物)の相続登記(名義変更)
  • 銀行預金の解約・払い戻し手続き
  • 株式・証券口座の名義書き換え
  • 相続税の申告(配偶者の税額軽減などの特例を使う場合)
  • 自動車の所有権移転登録

詳しく解説していきます。

1-1-1.不動産(土地・建物)の相続登記(名義変更)

不動産の所有者を変更する相続登記の手続きにおいて、法定相続分とは異なる割合で相続する場合に遺産分割協議書が必要です。法務局に対し、特定の相続人が不動産を取得した根拠を示すためです。

2024年4月から相続登記が義務化されたことで、放置せずに速やかにおこなう必要があります。

もし遺産分割協議書を作成せずに法定相続分通りに共有名義で登記してしまうと、将来売却する際に全員の同意が必要になるなど、管理が難しくなります。特定の誰かが引き継ぐのであれば、必ず遺産分割協議書を作成して登記申請をおこないましょう。

1-1-2.銀行預金の解約・払い戻し手続き

亡くなった方の銀行口座は凍結されるため、解約や払い戻しを受ける際に遺産分割協議書が必要となります。銀行は、相続人同士のトラブルに巻き込まれるのを防ぐため、誰が預金を受け取るか決まっていることを厳格に確認します。

金融機関所定の用紙に相続人全員が実印を押せば、遺産分割協議書なしで手続きできる場合もあります。しかし、複数の金融機関に口座がある場合、銀行ごとに全員の実印を集めるのは大変な手間です。

遺産分割協議書が1通あれば、それを各銀行に使い回せるため、手続きの負担を大幅に減らせます。

1-1-3.株式・証券口座の名義書き換え

株式や投資信託などの有価証券を相続する場合も、原則として遺産分割協議書によって、誰が何を取得するかの合意を確認できる必要があります。

被相続人名義のままでは売却や換金ができないため、まずは相続人の口座へ移管しなければなりません。誰がどの銘柄を何株引き継ぐのかを明確にした遺産分割協議書がないと、証券会社は移管手続きを受け付けてくれないのです。

とくに株式は価格が変動する資産であるため、手続きが遅れると売り時を逃すリスクもあります。スムーズに資産を引き継ぐためにも、早めに遺産分割協議書を作成して提出しましょう。

1-1-4.相続税の申告(配偶者の税額軽減などの特例を使う場合)

相続税の申告において、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった控除制度を利用する場合、遺産分割協議書の写しが必要です。これらの特例は、遺産分割が確定していることが適用の条件となっているからです。

申告期限である「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内」までに協議がまとまっていないと、特例を使えず税額が高くなる恐れがあります。期限内に遺産分割協議書を作成し提出することで、大幅な節税効果を得られますので、税務申告が必要な方は優先的に作成を進めましょう。

1-1-5.自動車の所有権移転登録

自動車の所有者を変更する際にも、原則として遺産分割協議書が求められます。自動車は資産としての価値があるため、運輸支局で名義変更(移転登録)をおこなわなければ、売却することも廃車にすることもできません。

査定額が100万円以下の自動車であれば、簡略化された「遺産分割協議成立申立書」で代用できる場合もありますが、原則として遺産分割協議書が必要です。

「誰がこの車を引き継ぐか」を明確にしておかないと、事故や保険の手続きなどでトラブルになる可能性があるため、しっかりと書面に残しておきましょう。

2.遺産分割協議書が原則として必要になるケース

遺産分割協議書は、以下のようなケースで必要になります。

  • 遺言書が遺されていない場合
  • 相続人が複数人いる場合
  • 相続税の申告義務が発生する場合
  • 不動産を換価分割・代償分割する場合
  • 相続登記をおこなう場合

ご自身の状況がこれらに当てはまる場合は、作成の準備を進めてください。詳しく解説します。

2-1.遺言書が遺されていない場合

被相続人が遺言書を作成していなかった場合、誰がどの財産を相続するか指定されていないため、遺産分割協議書の作成が必須です。

遺言書がない相続では、民法で定められた相続人が全員で話し合い、ゼロから分け方を決めなければなりません。話し合いの結果を書面にまとめたものが遺産分割協議書です。

遺産分割協議書を作成しないと、いつまでも遺産が全員の共有状態のままとなり、誰も自由に財産を使えなくなってしまいます。遺言書が見つからないときは、必ず遺産分割協議書を作成して権利関係を確定させる必要があります。

2-2.相続人が複数人いる場合

相続人が2人以上いる場合は、遺産をどのように配分するかを決める必要があるため、遺産分割協議書を作成するのが基本です。

相続人が1人だけであれば、その人がすべての財産を自動的に引き継ぐため、話し合う必要も遺産分割協議書を作る必要もありません。しかし、配偶者と子供、あるいは兄弟姉妹など、複数の相続人がいる場合は権利が複雑になります。

「誰が実家を継ぐか」「預金はどう分けるか」といった詳細な取り決めを形に残しておかないと、のちのち親族間での揉め事に発展する可能性があり注意が必要です。

2-3.相続税の申告義務が発生する場合

相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告が必要となり、その添付書類として遺産分割協議書が求められます。

前述のとおり、税金の負担を減らす各種特例を受けるためには、「誰がどの財産を取得したか」が確定していなければなりません。税務署に対して、「私たちはこのように遺産を分けました」と証明できないと、特例が否認されるリスクがあります。

申告期限までに協議を成立させ、書類を準備しておくことが、節税対策の面でも非常に重要です。

2-4.不動産を換価分割・代償分割する場合

不動産を売却して現金を分ける「換価分割」や、特定の人が不動産をもらう代わりにお金を払う「代償分割」をおこなう場合、遺産分割協議書の作成は必須です。

たとえば代償分割の場合、遺産分割協議書に「長男は不動産を取得する代わりに、次男に現金1,000万円を支払う」と明記しておかないと、単なる現金のやり取りとみなされ、贈与税がかかってしまう恐れがあります。

税務署に対して、これは相続に伴う正当なお金の移動であることを証明するためにも、詳細な記載をした遺産分割協議書が不可欠です。

2-5.相続登記をおこなう場合

不動産の名義を、法定相続分通りの共有ではなく、特定の相続人の名義にする場合は遺産分割協議書が必要です。たとえば「母と子で2分の1ずつ」ではなく、「母が単独で所有する」といったケースです。

実務上、共有名義にすると売却や活用の自由度が下がります。そのため、誰か一人の名義に集約することが一般的といえます。このとき法務局は、「ほかの相続人が権利を手放し、その人が単独所有することに合意した証明」として遺産分割協議書を要求します。

将来的な権利関係をシンプルにするためにも、遺産分割協議書を用いた登記をおすすめします。

関連記事:相続登記に遺産分割協議書は必須?ない場合の手続きの進め方

3.遺産分割協議書が不要となる4つの例外ケース

遺産分割協議書は原則として作成が必要ですが、誰がどの財産を受け継ぐかが客観的に明らかである場合など、特定の条件下では作成しなくてもよいケースがあります。以下のようなケースです。

  • 有効な遺言書があり、その通りに分ける場合
  • 相続人が1人だけの場合
  • 遺産が現金・預貯金しかない場合(不動産が含まれない)
  • 法定相続分の割合通りに遺産分割する場合

それぞれ解説します。

3-1.有効な遺言書があり、その通りに分ける場合

被相続人が法的に有効な遺言書を残しており、その内容どおりに遺産を分けるのであれば、遺産分割協議書は不要です。遺言書自体が「故人の意思」と「財産の行き先」を証明する強力な書類として機能するため、金融機関や法務局での手続きにそのまま使用できるからです。

ただし、遺言書に記載のない財産が新たに見つかった場合や、相続人全員の合意により遺言とは異なる分け方を希望する場合には、別途遺産分割協議書が必要となります。

まずは遺言書が法的に有効なものであるか、検認手続きが必要かどうかを確認しましょう。

3-2.相続人が1人だけの場合

相続人が一人しかいない場合、遺産を分ける話し合いをする相手がいないため、遺産分割協議書を作成する必要はありません。被相続人の財産は、法律上当然にその唯一の相続人がすべて引き継ぐことになるからです。

この場合、銀行や法務局での手続きでは、遺産分割協議書の代わりに、自分が唯一の相続人であることを証明する戸籍謄本一式を提出することになります。ほかに相続人がいないことを証明するため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を漏れなく集めることが重要です。

3-3.遺産が現金・預貯金しかない場合(不動産が含まれない)

遺産が現金や預貯金のみで不動産が含まれない場合、必ずしも正式な遺産分割協議書を作成しなくても手続きは可能です。各金融機関が用意している「相続届(払戻請求書)」などの所定用紙に、相続人全員が署名と実印を押せば、合意があったものとみなされるからです。

ただし、銀行の数が多かったり、株式や自動車などほかの財産があったりする場合は、遺産分割協議書を1通作成して使い回すほうが効率的といえます。銀行ごとに全員の実印を集める手間を省けるため、相続人の数や居住地を考慮して判断するとよいでしょう。

関連記事:遺産分割協議書なしでも預金相続は可能?相続できるケースや手続きの流れ

3-4.法定相続分の割合通りに遺産分割する場合

民法で定められた法定相続分の割合どおりに遺産を分ける場合、遺産分割協議書は原則として不要です。「誰がどの財産を取得するか」を話し合って決めるのではなく、法律のルールに従って機械的に権利を分けることになるからです。

たとえば不動産を法定相続分で共有名義にする登記申請では、遺産分割協議書の添付は求められません。ただし不動産に関しては、この方法は権利関係が複雑になりやすいため、次項で解説するリスクを十分に理解したうえで選択する必要があります。

3-4-1.【注意】法定相続分通りでも、のちのちトラブルになる場合が多い

法定相続分どおりに不動産を共有名義で相続すると、のちのち売却や活用をする際に大きなトラブルになるケースが多いです。

共有不動産を売却したり、大規模なリフォームをしたりするには、共有者全員の同意や実印が必要となり、一人でも反対する人がいると何もできなくなります。また、共有者が亡くなるとさらに相続人が増え、権利関係がネズミ算式に複雑化してしまいます。

将来の自由度を確保するためにも、安易な共有は避け、遺産分割協議書を作成して単独所有にするのがおすすめです。

4.【仲が良い家族でもリスクあり】遺産分割協議書を作成すべき3つの理由

相続人同士の仲が良く、口頭での話し合いで円満に合意できたとしても、遺産分割協議書は作成しておくべきです。それはなぜなのか、以下3つの理由を解説します。

  • 手続き先(銀行・法務局)での対応がスムーズになる
  • 言った言わないのトラブルを未然に防げる
  • 数次相続の発生時に対応でき

詳しく見ていきましょう。

4-1.手続き先(銀行・法務局)での対応がスムーズになる

遺産分割協議書があれば、銀行や法務局などの窓口での手続きが圧倒的にスムーズに進みます。

遺産分割協議書がない場合、金融機関ごとに相続人全員の実印を押した書類を提出しなければなりません。相続人が遠方に住んでいる場合などは郵送のやり取りだけで数カ月かかることもあります。

一方遺産分割協議書が1通あれば、それを各窓口に提示するだけで「全員の合意」を証明できるため、代表者が一人で効率よく手続きを済ませることが可能です。手間と時間を大幅に節約できるのが大きなメリットです。

4-2.言った言わないのトラブルを未然に防げる

相続の決定事項を書面に残すことで、将来的に「言った、言わない」という親族間のトラブルを未然に防ぐことができます。

口約束だけの合意は法的効力が弱く、時間が経ってから「本当はもっともらえるはずだった」「勘違いしていた」と主張されても、反論する客観的な証拠がありません。遺産分割協議書に実印を押して印鑑証明書を添付すれば、合意内容は覆せない強力な証拠となります。

お互いの信頼関係を壊さないためにも、明確なルールブックを作っておくことが大切です。

4-3.数次相続の発生時に対応できる

遺産分割協議書を作成しておくと、手続きが終わる前に相続人の一人が亡くなる「数次相続」が発生しても対応しやすくなります。

もし遺産分割協議書がない状態で次の相続が発生すると、亡くなった相続人の権利がその家族に引き継がれ、話し合いに参加すべき人数が一気に増えてしまいます。当初の話し合いで合意していた事実を遺産分割協議書として残しておけば、当事者が亡くなったあとでも、その内容をもとに手続きを進めることができるため安心です。

5.遺産分割協議書を自分で作成することは可能?

遺産分割協議書は、専門家の力を借りずとも、自分たちだけで作成することはできるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

5-1.遺産分割協議書は自分で作成しても法的に有効

遺産分割協議書は、専門家が作らなくても 相続人全員の合意と署名・実印があれば法的に有効です。用紙サイズや縦書き・横書きの形式にも決まりはなく、A4やパソコン作成・手書きなど自由に作れます。

ただし、内容に誤りがあると銀行や法務局の手続きで受理されず、1文字の誤記でも金融機関や法務局で受理されず、訂正・作り直しが必要になることがあります。

重要なのは、「誰が」「どの財産を」「どのように相続するか」が第三者にも明確に伝わる形で記載されていることです。

5-2.遺産分割協議書を作成する流れ

いきなり書類を作成するのではなく、正しい手順を踏んで進める必要があります。準備不足のまま作成を始めると、あとから新たな財産が見つかったり、相続人の漏れが発覚したりして、最初からやり直しになるケースが少なくありません。

自分で遺産分割協議書を作成する場合は、以下の流れで進めてください。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 法定相続人と相続財産を調査し確定する
  3. 相続人全員で遺産分割協議をおこなう
  4. 合意した内容をもとに遺産分割協議書を作成する

詳しく見ていきましょう。

5-2-1.遺言書の有無を確認する

まずはじめに、被相続人が遺言書を残していないかを確認します。有効な遺言書がある場合、原則としてその内容が優先されるため、遺産分割協議書を作成する必要がなくなるからです。

自宅の金庫や仏壇、公証役場などを探し、自筆証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所での検認手続きをおこないます。遺言書の有無によって、その後の遺産分割の進め方や必要書類が大きく変わるため、最優先でおこなうべき工程となります。

関連記事:遺言書があれば遺産分割協議書はいらない?例外ケースや手続きの手順

5-2-2.法定相続人と相続財産を調査し確定する

次に、誰が相続人になるのか、どのような財産があるのかを調査して確定させます。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めて相続人を特定し、預金通帳や不動産の権利証などから財産リストを作成します。

もし相続人が一人でも漏れていたり、記載すべき財産が抜けていたりすると、その遺産分割協議書は無効となってしまいます。全員が納得して話し合いをおこなうための材料として、正確な財産目録を作ることが大切です。

関連記事:相続人と連絡が取れないときの相続の進め方・対処法を徹底解説

5-2-3.相続人全員で遺産分割協議をおこなう

相続人と財産が確定したら、全員で「誰が何を取得するか」を話し合う遺産分割協議をおこないます。必ずしも全員が一堂に会する必要はなく、電話やメール、手紙でのやり取りでも問題ありません。

重要なのは、最終的に全員が合意することです。一人でも反対する人がいれば協議は成立しません。遠方に住む相続人がいる場合は、オンライン通話などを活用しながら、全員が納得できる分割案がまとまるまで慎重に話し合いを進めましょう。

5-2-4.合意した内容をもとに遺産分割協議書を作成する

話し合いで合意が得られたら、その内容を正確に書面に落とし込み、遺産分割協議書を作成します。決定事項を箇条書きにするなどして、第三者が見ても内容が一目でわかるように記述します。

作成した書類には、相続人全員が署名し、実印を押印することで完成となります。書類が複数枚にわたる場合は、ページとページの間に契印(割印)を押すことも忘れないでください。これが、手続きにおける正式な証明書となります。

5-3.遺産分割協議書に必ず記載すべき5つの項目

遺産分割協議書には、法的に有効とするために欠かせない記載項目がいくつか存在します。主に以下の内容です。

  • 誰が(相続人全員)
  • どの財産を(特定)
  • 誰が取得するか(分割方法)
  • 日付と署名・実印の押印
  • 印鑑証明書の添付

これらの項目が一つでも抜けていると、名義変更の手続きを受け付けてもらえない可能性があるため注意が必要です。それぞれ解説します。

5-3-1.誰が(相続人全員)

冒頭には、「被相続人〇〇の遺産について、共同相続人全員で協議した結果、以下のとおり合意した」という旨を記載し、誰の遺産についての協議かを明確にします。そして、書面の最後には相続人全員の住所と氏名を自筆で署名します。

ここでの住所や氏名は、印鑑証明書に記載されているものと一字一句同じでなければなりません。マンション名や番地の表記などが異なると不備とみなされることがあるため、住民票などの公的書類を見ながら記入しましょう。

5-3-2.どの財産を(特定)

分割の対象となる財産は、誰が見ても特定できるように詳細かつ正確に記載する必要があります。

たとえば不動産であれば、住所(住居表示)ではなく、登記簿謄本に記載されている「所在・地番・家屋番号」などをそのまま書き写します。銀行預金であれば、銀行名・支店名・種別・口座番号まで記載します。

「自宅の土地」や「A銀行の預金」といった曖昧な表現をすると、正式な書類として認められないケースがほとんどです。十分に注意してください。

5-3-3.誰が取得するか(分割方法)

特定された財産を「誰が」「どのように」取得するのかを明確に記します。「長男〇〇は、以下の不動産を相続する」といったように、主語と目的語をはっきりさせることが重要です。

また、代償分割をする場合は「長男は不動産を取得する代わりに、次男へ現金〇〇円を支払う」と具体的な金額や支払い期限まで記載します。

書き方が曖昧だと、のちの解釈の違いでトラブルになる恐れがあるため、誰が読んでも一つの意味にしかならない文章を心がけてください。

5-3-4.日付と署名・実印の押印

協議が成立した日、または書類を作成した日を必ず記載します。日付がないと、いつの時点での合意かが証明できず、無効とされる場合があります。

そして、相続人全員が署名の横に実印を押印します。使用するのは、市区町村役場で登録済みの実印でなければなりません。認印やシャチハタは不可です。

押印が不鮮明だったり、かすれていたりすると受理されないことがあるため、朱肉を使って鮮明に押すように注意しましょう。

5-3-5.印鑑証明書の添付

作成した遺産分割協議書には、相続人全員分の印鑑証明書を添付する必要があります。これにより、押されたハンコが実印であること、そして本人の意思で押されたものであることが証明されます。印鑑証明書は、遺産分割協議書に押印した時点での住所氏名と一致している必要があります。

また、金融機関や法務局によっては「発行から3カ月以内」や「6カ月以内」のものといった有効期限を定めている場合があるため、取得時期にも気を配りましょう。

5-4.インターネット上の雛形を利用する際の注意点

Web上には多くの無料テンプレート(雛形)がありますが、利用する際はご自身の状況に合わせて修正する必要があります。雛形はあくまで一般的なケースを想定したものであり、複雑な分割方法や特殊な事情には対応していないことが多いからです。

たとえば「あとから見つかった財産の扱い」についての記載がない雛形を使うと、新たな遺産が出た際に再び協議が必要になります。ダウンロードした内容を鵜呑みにせず、必要な条項が揃っているか確認して使いましょう。

6.自分で遺産分割協議書を作成するのが難しい・専門家に相談すべきケース

状況によっては、自分たちだけで完璧な遺産分割協議書を作成するのが困難な場合もあります。無理に進めると、手続きが止まったり、親族間の関係が悪化したりするリスクが高まります。

とくに以下のようなケースでは、遺産分割協議書の作成を専門家に依頼したほうが良いです。

  • 相続人の数が多い、または面識のない相続人がいる
  • 相続人の中に未成年者や認知症の方がいる(特別代理人・後見人)
  • 話し合いがまとまらず、揉める可能性がある

それぞれ解説します。

6-1.相続人の数が多い、または面識のない相続人がいる

相続人が兄弟姉妹や甥・姪にまで広がり人数が多い場合や、前妻の子など面識のない相続人がいる場合は、専門家の介入が望ましいです。

人数が増えれば増えるほど、全員から署名・捺印を集めるだけでも膨大な手間と時間がかかります。また、疎遠な親族に対して突然「実印を押してほしい」と連絡しても、警戒されて協力を得られないことがよくあります。

第三者である専門家が間に入ることで、事務的な手続きとしてスムーズに進行できる可能性が高まるでしょう。

関連記事:前妻の子に相続の連絡が必要なケースや立場別のトラブルを避ける方法

6-2.相続人の中に未成年者や認知症の方がいる(特別代理人・後見人)

相続人の中に未成年者や認知症で判断能力が不十分な方がいる場合、そのままでは遺産分割協議に参加できません。未成年者の場合は「特別代理人」、認知症の方の場合は「成年後見人」を家庭裁判所で選任してもらう必要があります。

これらの手続きは非常に専門的で複雑であり、選任されるまでに数カ月かかることもあります。法的に正しい手順を踏まないと協議自体が無効になるため、知識のある専門家にサポートを依頼するのが安全な選択といえます。

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6-3.話し合いがまとまらず、揉める可能性がある

誰がどの遺産をもらうかで意見が対立し、話し合いがまとまらない場合は、当事者だけで解決するのは困難です。感情的になりやすく、一度こじれると修復不可能なほど関係が悪化する恐れがあります。

第三者である専門家に入ってもらうことで、法的根拠に基づいた公平なアドバイスを受けられ、冷静な話し合いに戻せる可能性があります。どうしても合意できない場合は調停や審判に移行することになるため、早めに弁護士等の専門家へ相談しましょう。

7.遺産分割協議書が必要かに関連するよくある質問

最後に、遺産分割協議書が必要かどうか疑問をお持ちの方からよくある質問とその回答をまとめました。

7-1.遺産分割協議なしでも相続を完了できますか?

結論からいうと、有効な遺言書がある場合や、相続人が一人しかいない場合などは、遺産分割協議なしで相続手続きを完了できます。また、民法で定められた「法定相続分」の割合どおりに、きっちりと分ける場合も協議は不要です。

しかし、特定の誰かが不動産を引き継いだり、預金を分けたりするなど、法定相続分と異なる割合で分けるなら協議は必須となります。多くのケースでは、誰がどの財産をもらうか話し合う合意形成が必要になるため、まずは遺言書の有無を確認することから始めましょう。

7-2.遺産分割協議書がなくても相続登記できますか?

法定相続分どおりの割合で「共有名義」として登記する場合に限り、遺産分割協議書がなくても不動産の相続登記は可能です。この場合、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などの証明書類があれば、法務局で申請できます。

ただし、共有名義にすると、将来売却する際に全員の同意が必要になるなど、管理が非常に難しくなります。特定の相続人が単独で所有したいのであれば、遺産分割協議書を添付して登記するのが一般的であり、リスク回避のためにも推奨されます。

7-3.遺産分割協議書を作らないとどうなりますか?

遺産分割協議書を作らないと、被相続人の財産は相続人全員の共有状態のままとなり、預金の引き出しや不動産の売却が自由にできなくなります。

銀行口座は凍結されたままですし、不動産の名義変更も特定の誰かに集約できません。また、時間が経つにつれて相続人の一人が亡くなるなどして関係者が増え、話し合いがさらに困難になる「数次相続」のリスクも高まります。

将来の親族間トラブルを防ぐためにも、早めに作成して権利関係を確定させるべきです。誰のものかわからない財産を放置するのは避けましょう。

関連記事:遺産分割協議書を作成しないとどうなる?起こりうる6つのトラブル例

7-4.遺産分割協議書はいつまでに作るべきですか?

遺産分割協議書の作成自体には、法律上の明確な期限はありません。しかし、相続税の申告が必要な場合は「10カ月以内」に提出しないと、配偶者の税額軽減などの特例が受けられなくなります。

また、2024年4月から相続登記が義務化されており、不動産の取得を知ってから「3年以内」の申請が必要です。期限がないからといって放置すると、書類の収集が困難になる恐れもあるため、四十九日の法要などを目安に話し合いを始め、速やかに作成しましょう。期限を過ぎて不利益を被らないよう注意が必要です。

8.まとめ

遺産分割協議書は、不動産の名義変更や銀行預金の解約といった相続手続きにおいて、「誰が何を引き継ぐか」を証明する重要な鍵となる書類です。

有効な遺言書がある場合などを除き、原則として作成が必要であり、たとえ家族仲が良くても書面に残すことが将来の「言った言わない」のトラブル防止につながります。

ご自身で作成することも可能ですが、不備による二度手間や親族間の対立が不安な場合は、司法書士などの専門家へ相談するのが確実です。手続きを放置すると事態が複雑化する恐れもあるため、本記事を参考に、早めの話し合いと作成を進めていきましょう。

司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、遺産分割協議書の作成や各種手続きなど、相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。

監修者 池部 翔司法書士・行政書士

司法書士法人・行政書士鴨川事務所 代表

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京都司法書士会・京都府行政書士会所属

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