遺産分割協議書での預金の分け方別文例集 | 正しい書き方とルール
遺産相続のお金を振り込んでくれない理由と対処法
2025.09.09

相続に関する話し合いを終え、相続人全員の実印が押された「遺産分割協議書」も作成したのに、遺産を管理する相続人から、お金がいつまで経っても振り込まれない。そんな不誠実な対応に、憤りや不安を感じていませんか。
ですが場合によっては、単に手続きが遅れているだけの場合も考えられ、適切な確認と対応が必要です。
そこでこの記事では、以下の内容を解説していきます。
- 遺産相続のお金を振り込んでくれない理由・原因
- 遺産相続したお金が振り込まれないときの対処法
- 遺産相続したお金が振り込まれるまでの期間
- 【種類別】遺産相続したお金が振り込まれるまでの流れ
この記事を読むことで、遺産相続したお金が振り込まれない原因から、どのように対応するべきかを網羅的に理解することができます。遺産相続したお金についてお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
1.遺産相続のお金を振り込んでくれない理由・原因

遺産相続のお金が振り込まれない理由は、単に手続きが遅れているだけのケースから、財産の使い込みといった悪質なケースまで、様々な原因が考えられます。まずは、手続きがどの段階にあるのかを冷静に把握することが、問題解決の第一歩です。
ここでは、相続手続きが「完了していない場合」と「完了しているはずの場合」に分けて、遺産相続のお金を振り込んでくれない理由や原因を解説します。
1-1.遺産相続の手続きが終了していない場合
遺産相続の手続きが終了していない場合には、以下のような理由から相続するお金が振り込まれていない可能性があります。
- 相続人が確定していない
- 遺産分割協議が終了していない
- 遺産分割協議書に不備があった
- 相続登記がされていない
- 相続放棄の手続きが完了していない
- 代表相続人による手続きが完了していない
それぞれ解説します。
1-1-1.相続人が確定していない
故人の出生から死亡までの戸籍謄本が全て集まっておらず、法的な相続人が完全に確定していない場合、遺産の分配はできません。
遺産分割協議は、相続人全員の参加が絶対条件です。そのため相続人調査が終わっていなければ、遺産分配の話し合いに進むこと自体ができないのです。
1-1-2.遺産分割協議が終了していない
相続人全員で誰がどの財産をどれだけ相続するのかを話し合う「遺産分割協議」が、まだ終わっていない、あるいは合意に至っていないケースです。
相続人の中で一人でも合意内容に反対している人がいれば、遺産分割協議は成立しません。この場合、法的に有効な合意が存在しないため、誰も預貯金などを引き出すことができず、振り込みがおこなわれないのは当然の状態といえます。
1-1-3.遺産分割協議書に不備があった
遺産分割協議で合意した内容をまとめた「遺産分割協議書」に不備がある場合も、手続きはストップします。
たとえば、相続人の誰かの署名や、実印の押印が漏れていたり、記載された不動産の情報が間違っていたりするケースです。この場合、金融機関や法務局は、書類を正式なものとして受け付けません。
遺産分割協議書を完璧な状態に作り直さない限り、振り込みなどの手続きはおこなわれません。
関連記事:遺産分割協議書を作成しないとどうなる?起こりうる6つのトラブル例
1-1-4.相続登記がされていない
遺産に不動産が含まれ、「不動産を売却して、その代金を分ける(換価分割)」という合意をした場合、まず不動産の名義変更を完了させないと、売却活動に進めません。不動産の名義変更を、相続登記と呼びます。
相続登記の手続きには、1カ月以上の時間がかかることもあります。不動産が売却され、その代金が入金されてから初めて各相続人への振り込みが可能になるため、手続きが遅れている可能性があります。
1-1-5.相続放棄の手続きが完了していない
相続人のなかに相続放棄を検討している人がいる場合、その手続きが完了するまで、遺産の分配は開始できません。
相続放棄の申述期間は「相続の発生を知った時から3カ月」です。もし誰かが相続放棄をすれば、相続人の構成そのものが変わる可能性があります。そのためほかの相続人は、その結果が確定するまで待っている状態です。この場合も、手続きの遅れは正当な理由によるものといえます。
関連記事:相続放棄の期間を知らなかった!期間が過ぎても相続放棄が認められる条件
1-1-6.代表相続人による手続きが完了していない
遺産分割協議書が完成していても、代表相続人による手続きが遅れている場合があります。手続き自体に時間がかかっている場合や、代表相続人が多忙で手続きを進められない場合など、理由はさまざまです。
代表相続人は、遺産分割協議書をもとに各金融機関を回り、故人の口座を解約して資金を集約する必要があります。この手続きには一定の時間がかかり、金融機関によっては数週間から1カ月以上かかることもあります。
全ての財産が現金化されて代表相続人の口座に集まるまでは、ほかの相続人への振り込みはできません。そのため、代表相続人はできるだけ早く手続きを進めることが重要です。
1-2.遺産相続の手続きが完了している場合
遺産分割協議も終わり、手続きが完了しているはずなのに振り込みがない場合もあります。考えられる原因は、以下の5つです。
- 相続税の申告が完了していない
- 金融機関や不動産会社の手続きが遅延している
- 相続人があとから発覚した
- 相続人の一人が遺産を独り占めしようとしている
- 相続人の一人が遺産を使い込んだ
一つずつ解説します。
1-2-1.相続税の申告が完了していない
遺産の総額が大きく、相続税の申告が必要な場合、代表相続人が税理士に依頼して、申告手続きを進めている最中である可能性が考えられます。相続税の納税資金を故人の預金から支払う必要があるため、納税額が確定し、税務署への申告・納付が完了するまで、各相続人への分配を保留しているケースです。
この場合は、相続税の申告期限である10カ月が一つの目安となります。
1-2-2.金融機関や不動産会社の手続きが遅延している
遺産分割協議書に不備がなくても、金融機関側の内部手続きに予想以上に時間がかかっている可能性もあります。
とくに、複数の支店に口座があったり、投資信託などが含まれていたりすると、手続きは複雑化します。結果として、遺産相続したお金の振り込みが遅延してしまうのです。
また、不動産の売却を不動産会社に依頼している場合、買い手がなかなか見つからず、売却活動そのものが長引いているというケースも考えられます。
1-2-3.相続人があとから発覚した
一度は遺産分割協議がまとまったものの、その後の調査で、誰も知らなかった新たな相続人(たとえば、故人の認知した子など)が発覚したケースです。この場合、すでにおこなった遺産分割協議は無効となります。新たな相続人を加えて、もう一度、最初から協議をやり直す必要があるのです。
そのため、当然予定されていた振り込みも、全て白紙に戻されることになります。
1-2-4.相続人の一人が遺産を独り占めしようとしている
最も悪質なのは、遺産を管理している相続人の一人が、意図的に遺産を独り占めしようとして支払いを拒否しているケースです。いずれほかの相続人に渡さなければならないと分かっていながら、少しでも長く自分の手元にお金を置いておきたい。あるいは、あなたを精神的に疲れさせて、不利な条件での再交渉に持ち込もうとしている、といった理由が考えられます。
この場合は、速やかに弁護士に相談し、法的な手段を講じる必要があります。
1-2-5.相続人の一人が遺産を使い込んだ
最悪のケースとして、遺産を管理していた相続人が、すでに故人の預金を使い込んでしまっているケースです。「振り込みたくても、振り込むお金がない」という理由から、遺産相続のお金がいつまでも振り込まれない可能性が考えられます。
この場合は、遺産の返還を求める「不当利得返還請求」など、法的な訴訟を検討することになります。
2.遺産相続のお金を振り込んでくれないのは、法的に許される?
遺産分割協議にて相続人間で合意している場合は、正当な理由なく遺産相続のお金を振り込まない行為が法的に許されることはありません。なぜなら、相続人全員の署名・押印がある「遺産分割協議書」は、単なる話し合いの記録ではなく、「法的な拘束力を持つ契約書」だからです。
遺産分割協議にて決定した契約内容を守らないことは、明確な義務違反となります。
2-1.「遺産分割協議書」は、法的な拘束力を持つ契約書
相続人全員が実印を押して作成した「遺産分割協議書」は、裁判の判決と同じくらい、強い法的な拘束力を持っています。
遺産分割協議書は、相続人全員が記載されている内容に同意したことを公的に証明するものです。そのため、一度成立した合意を、相続人の一人があとから一方的に「気に入らない」といった理由で覆すことは原則として認められません。
まさに、相続トラブルを最終的に解決するための、切り札となる書類なのです。
2-2.合意を守らないことは、明確な契約違反となる
遺産分割協議書に定められた通りにお金を振り込まない、あるいは不動産の名義変更に協力しないといった行為は、明確な契約違反にあたります。
契約違反の状態が続く場合、あなたは、約束を守らない相続人に対して、法的な手段をもって請求する正当な権利を持っています。泣き寝入りする必要は全くなく、法律はあなたの権利を守ってくれます。
3.遺産相続したお金が振り込まれないときの対処法

遺産相続したお金が振り込まれない場合は、以下の対処法を実践するようにしてください。
- 相続人と連絡を取り、振込が遅れている理由を確認する
- 内容証明郵便を送る
- 家庭裁判所に調停を申し立てる
- 訴訟を検討する
- 司法書士や弁護士に相談する
感情的に対立するのではなく、冷静に、そして法的な手順にそって、着実に権利の実現を目指すことが重要です。それぞれ解説します。
3-1.相続人と連絡を取り、振込が遅れている理由を確認する
まずは、遺産を管理している代表相続人に対して、なぜ振り込みが遅れているのか、その理由を冷静に確認することから始めましょう。
金融機関での手続きに時間がかかっているといった、悪意がなくやむを得ない理由で遅れているだけの可能性も十分にあります。すぐに相手を疑って対立するのではなく、まずは客観的な状況を把握してください。
そして振り込みが遅れている理由を確認できたら、具体的な振込期日がいつ頃になるのかを改めて話し合いましょう。この際、感情的な非難は避け、「手続きで困っていることはないか」「何か手伝えることはあるか」といった協力的な姿勢を示すことも、相手の態度を軟化させるうえで有効な場合があります。
この段階での話し合いの記録は、念のためメモなどに残しておくのがおすすめです。
3-2.内容証明郵便を送る
相続人と話し合いをしても、相手が曖昧な返事を繰り返したり、支払いに応じなかったりする場合があります。そのようなときは、「内容証明郵便」を送付して、正式に支払いを請求しましょう。
内容証明郵便は、「いつ、誰が、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれるものです。これにより、「遺産相続のお金を請求した」という客観的な証拠が残り、相手に強い心理的なプレッシャーを与えることができます。
法的措置に移る前の最後通告としての意味合いを持つ、重要な手続きです。
3-3.家庭裁判所に調停を申し立てる
内容証明を送っても無視されるなど、当事者間での解決が困難な場合は、家庭裁判所に「紛争調整調停」を申し立てます。
紛争調整調停では、裁判所の調停委員という中立的な第三者が間に入り、双方の事情を聞きながら話し合いによる円満な解決を目指します。ここで成立した合意は、「調停調書」として記録され、一定の法的効力を持ちます。
感情的な対立や意見の食い違いがあるとき、冷静な話し合いの場に戻すための有効な手段が、紛争調整調停です。
3-4.訴訟を検討する
紛争調整調停でも話し合いがまとまらない場合の最終手段として、地方裁判所に訴訟の提起を検討してください。
訴訟では、裁判官が、遺産分割協議書の有効性などを審理し、支払い義務があるかどうかの法的な判断(判決)を下します。判決が出れば、相手の意思にかかわらず、法的に支払いを強制することが可能になります。時間と費用はかかりますが、相続権を実現するための最も強力な手段です。
3-5.司法書士や弁護士に相談する
相手方が振り込みに応じない、というトラブルに発展した場合、できるだけ早い段階から司法書士や弁護士といった相続の専門家に相談することをおすすめします。
専門家は、法的な観点から最適な解決策を提案し、内容証明郵便の作成や金融機関への書類提出など、さまざまな面でサポートをしてくれます。精神的な負担を軽減し、あなたの正当な権利を確実に実現するために、専門家の力を借りるのが最善の道です。
4.遺産相続したお金が振り込まれるまでの期間
遺産分割協議が成立してから、実際にあなたの口座に遺産相続したお金が振り込まれるまでの期間は、遺産の内容や状況によって大きく異なります。数週間と短いケースもあれば、1年以上かかるケースもあるのです。
とくに、不動産のように、現金化するのに時間がかかる財産が含まれている場合は、長期化する傾向にあります。振り込みが遅いからといって、必ずしも他の相続人が意図的に遅らせているとは限らない、ということを理解しておくことが大切です。
関連記事:遺産相続で遺産はいつもらえる?手続きの流れや受け取り時期を解説
5.【種類別】遺産相続したお金が振り込まれるまでの流れ

遺産相続したお金が振り込まれるまでの流れを、以下の種類別に解説していきます。
- 現金・預金(銀行口座)
- 不動産(土地・建物)
- 株式・証券
- 生命保険金
一つずつ解説します。
5-1.現金・預金(銀行口座)
故人の預貯金は、相続人全員の合意(遺産分割協議書など)が確認されたあと、金融機関での手続きを経て、代表相続人の口座に振り込まれます。
まず、代表相続人が、必要書類(戸籍謄本、遺産分割協議書、各相続人の印鑑証明書など)を金融機関に提出します。その後、金融機関内での確認作業を経て、口座が解約され、指定の口座へお金が送金されます。
書類提出から実際の振り込みまでには、通常数週間から1カ月程度の時間がかかります。
5-2.不動産(土地・建物)
相続した不動産を売却して、その代金を分ける場合(換価分割)、実際に振り込みがされるまでには、半年から1年以上かかることも珍しくありません。
まず、遺産分割協議書をもとに、法務局で不動産の名義変更(相続登記)をおこなう必要があります。登記が完了したあと、不動産会社の仲介によって買い手と売買契約を結び、その後入金となります。
このように、不動産の場合は売却というプロセスを挟むため、現金化までに最も時間がかかる財産といえるでしょう。
5-3.株式・証券
故人が保有していた株式や投資信託などの証券は、証券会社で相続手続きをおこない、相続人の証券口座に移管したうえで、売却・現金化します。
まず、証券会社に戸籍謄本や遺産分割協議書といった書類を提出します。手続きが完了すると、故人名義の株式などが、相続人自身の証券口座に移されます。
その後、相続人がご自身の判断で株式などを売却し、現金として受け取るという流れです。
書類提出から口座への移管まで、数週間から1カ月程度の時間を見ておくと良いでしょう。
5-4.生命保険金
生命保険金は、そもそも相続財産ではなく、保険金受取人として指定された人の「固有の財産」です。そのため、遺産分割協議は一切不要で、受取人が単独で保険会社に直接保険金の支払いを請求します。
必要書類(死亡診断書、保険証券、受取人の戸籍謄本など)に不備がなければ、請求後から1〜2週間程度という、非常にスピーディーな支払いが一般的です。
ほかの相続財産とは全く別の手続きで迅速に受け取れるのが、生命保険金の大きな特徴です。
6.まとめ
この記事では、遺産相続したお金が振り込まれない理由や、対処法などを詳しく解説しました。最も重要なことは、あなたが持つ「遺産分割協議書」が、あなたの権利を守るための強力な武器であると知ることです。
不誠実な相手との交渉に、これ以上心を疲弊させる必要はありません。あなたの正当な権利を迅速かつ確実に実現するために、まずは一度専門家に相談し、法的な手続きの第一歩を踏み出してください。
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