遺産相続

遺産分割協議書での預金の分け方別文例集 | 正しい書き方とルール

2026.01.07

「遺産分割協議書の預金の書き方がわからない」「口座が複数あってどう分ければいいか迷っている」と悩んでいませんか?金融機関の相続手続きは非常に厳格で、記載内容に少しでも曖昧な点があると、窓口で受け付けてもらえず、全員の実印をもらい直す「作成し直し」になるケースも少なくありません。

そこでこの記事では、遺産分割協議書における預金の正しい書き方やルールを、よくあるパターン別に「そのまま使える文例付き」で徹底解説します。

銀行での手続きをスムーズに進め、後々の親族間トラブルを防ぐためのポイントも網羅しました。初めての方でも迷わずに作成できるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。

1.遺産分割協議書における預金の正しい書き方・ルール

預金の書き方には、金融機関が迷わずに手続きできるような明確なルールがあります。記載内容があいまいだと、どの口座を誰が引き継ぐのかが特定できず、手続きを断られてしまう可能性があり注意が必要です。

遺産分割協議書へ預金に関する記載をする際は、以下の3点を押さえておきましょう。

  • 銀行名・支店名・口座番号を正確に記載する
  • 残高ではなく一切の権利と記載する
  • 名義人が被相続人であることを明記する

それぞれ解説します。

1-1.銀行名・支店名・口座番号を正確に記載する

対象口座を特定できるよう、金融機関名・支店名・預金種別・口座番号(必要に応じて名義人)を、通帳や取引明細の表記に沿って正確に記載しましょう。記載が不十分または誤りがあると、金融機関側で照合できず、追加資料の提出や訂正を求められて手続きが遅れることがあります。

複数の金融機関に口座がある場合は、それぞれを個別に記載するのが確実です。古い通帳を見て書くと支店名が変わっていることもあるため、最新の情報を確認してから記入するようにしてください。

1-2.残高ではなく一切の権利と記載する

預金の記載は、必ずしも具体的な金額まで書く必要はありません。実務上は、解約日までの利息等で金額が変動し得るため、口座を特定したうえで「当該預金に関する払戻請求権その他一切の権利(利息を含む)」のように包括的に記載する方法がよく用いられます。


金額指定で分ける場合は、残高不足や利息分の差額が生じたときの扱い(残余金の帰属など)も併せて定めると安全です。

1-3.名義人が被相続人であることを明記する

口座の特定をより明確にするため、口座番号等に加えて「名義人:被相続人〇〇〇〇」のように記載しておくと、第三者である金融機関にも分かりやすくなります。通常は、遺産分割協議書の冒頭で被相続人の氏名や死亡日を定義しますが、各財産の項目でも「被相続人〇〇名義の預金」と書くとより親切です。

誰のどの財産を誰が取得するのか、誰が読んでも誤解が生じないように情報を網羅しておくのが、トラブルを避けるためのポイントになります。

2.【文例あり】預金の分け方による遺産分割協議書への記載方法

ここからは、さまざまな預金の分け方別に、遺産分割協議書への記載方法を文例付きで解説していきます。

※こちらでご紹介する文例は、あくまで一例となります。ご家族の状況や相続の形によって記載内容が変わりますので、あらかじめご了承ください。

2-1.パターン①被相続人名義の預金口座が1つのみの場合

被相続人が利用していた金融機関が1つだけで、口座も1つしかないケースは、比較的シンプルで書きやすいパターンです。しかし、その1つの口座を「誰が」「どのように」取得・受領するかによって、協議書の書き方は変わります。

あとから「端数が合わない」「利息分の扱いが決まっていない」といったトラブルにならないよう、全員が納得できる分け方を選び、必要なルール(端数処理・手数料負担など)を記載しておきましょう。

ここでは、1つの口座に対する代表的な5つの方法と、それぞれの記載例を紹介します。

2-1-1.特定の相続人が全額を取得する

もっとも分かりやすいのは、特定の相続人1人が当該口座の預金をすべて取得する方法です。配偶者が生活費として取得する場合などに選ばれます。

記載する際は、残高(金額)を固定せず、口座を特定したうえで「解約時までの利息を含む」形で権利の帰属を明確にしておくと、利息や手数料による残高変動があっても整理しやすくなります。

なお、窓口に出向くのは代表者1人で足りる場合もありますが、金融機関所定の書式への記入や、相続人全員の署名押印・印鑑証明書等を求められることもあるため、必要書類は事前に確認しましょう。

遺産分割協議書への記載例:

1.相続人Aは、以下の遺産を取得する。

預貯金
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

※解約時までの利息を含む

2-1-2.相続人ごとに金額を指定して分ける

1つの口座から、「Aは100万円、Bは200万円」というように具体的な金額を指定して分ける方法です。分配額を明確にできる反面、口座残高が想定より少ない場合に不足が生じたり、解約時までの利息等で金額がわずかに変動したりします。

そのため、協議書では「残余金(利息を含む)を誰が取得するか」や、不足が生じた場合の調整方法をあらかじめ定めておくと安心です。

遺産分割協議書への記載例:

1.相続人Aおよび相続人Bは、以下の遺産について、次のとおり取得する。

預貯金
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

(1)金100万円 相続人A
(2)その余の預金全額(解約時までの利息を含む) 相続人B

2-1-3.相続相続分どおりにきっちり分ける(端数処理ルールも決める)

法定相続分など、話し合いで決めた割合(たとえば2分の1ずつ)で分ける方法です。公平性が高い反面、計算上、1円未満の端数(小数点以下)が生じる場合があります。実際の払戻金は1円単位のため、端数の扱い(切捨・切上・誰が取得するか)を決めておかないと、精算時に迷いが生じることがあります。

協議書に「端数はAが取得する」と明記しておくことで、実務上の手戻りを防ぎやすくなるでしょう。

遺産分割協議書への記載例:

1.以下の遺産については、相続人Aが2分の1、相続人Bが2分の1の割合でそれぞれ取得する。

預貯金
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.分割計算において1円未満の端数が生じた場合は、相続人Aがこれを取得する。

遺産を法定相続分どおりに分ける場合の遺産分割協議書については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

関連記事:法定相続分通りの相続では遺産分割協議書は不要?作成しないリスクとは

2-1-4.代表者がいったん全額を受領し、各相続人に分配して清算する

代表者が解約・払戻し手続きをおこない、受領した金員を協議内容に従って各相続人へ振り込んで清算する方法です。協議書では、代表者が手続きを行うこと、分配額(割合または金額)、支払期限、振込手数料の負担などを明記しておくと、後日のトラブル予防になります。

遺産分割協議書への記載例:

1.以下の遺産については、相続人Aが取得する。

預貯金
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.相続人Aは、前項の遺産の解約および払戻しの手続きを行い、受領した金員の中から、相続人Bに対し、その2分の1に相当する金員を、手続き完了後すみやかにBが指定する口座に振り込んで支払うものとする。
3.振込手数料については、Aの負担とする。

2-1-5.一人がもらう代わりに、その人の貯金からほかの相続人へ支払う

預金そのものはAが取得し、その代わりとしてAがBへ金銭を支払う「代償分割」という方法です。解約・払戻しの完了を待たずに、取得者が自己資金等で先に清算したい場合に使いやすい方法です。

協議書には、預金の取得とは別に「代償金としていくらを、いつ、どの方法で支払うか」を明確に記載します。支払期限・振込先・遅延時の扱いまで書くとより丁寧です。

遺産分割協議書への記載例:

1.相続人Aは、以下の遺産を取得する。

預貯金
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.相続人Aは、前項の預貯金を取得する代償として、相続人Bに対し、金100万円を令和◯年◯月◯日限り、Bの指定する口座に振り込んで支払うものとする。

2-2.パターン②預金口座が複数ある場合

複数の金融機関に口座を持っている場合、各口座をどう割り振るかがポイントになります。すべての口座を合算して分けるのか、口座ごとに取得者を決めるのかで、手続きの手間や公平感が変わります。

ここでは、複数口座がある場合の代表的な6つのパターンを見ていきましょう。

2-2-1.口座ごとに引き継ぐ人を決める

「X銀行は長男、Y銀行は次男」というように、口座ごとに取得者を割り振る方法です。口座残高が異なると不公平になりやすい一方、残高が近い場合や当事者が納得している場合には、分かりやすい方法です。

なお、実際の相続手続きでは、各相続人が自分の取得する銀行だけで完結できるとは限りません。金融機関所定書式への署名押印や必要書類は金融機関ごとに異なるため、案内に従って進めてください。

遺産分割協議書への記載例:

1.相続人Aは、以下の遺産を取得する。

X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.相続人Bは、以下の遺産を取得する。

預貯金2
Y銀行 △△支店 普通預金
口座番号 △△△△△△
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2-2-2.すべての口座を解約し、合計額を金額で分ける

すべての口座を解約して現金化し、「Aは合計1,000万円、Bは合計500万円」のように金額で指定して分ける方法です。総額を金額で確定させたい場合に適しています。

ただし、解約・払戻しの実務を担う人(代表者)を決める必要があり、すべての解約が終わるまで最終的な分配ができないことがあります。また、利息等により合計額が変動する可能性があるため、余剰分(残余金)の扱いも定めておくと安心です。

可能であれば、金融機関手続の都合上、口座を特定できるように列挙するのが望ましいです。

遺産分割協議書への記載例:

1.相続人Aは、以下すべての預貯金の解約および払戻しの手続きを行い、受領した金員の中から、相続人Bに対し金500万円を、相続人Cに対し金300万円を、手続き完了後すみやかに各人の指定する口座に振り込んで支払うものとする。

預貯金1
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

預貯金2
Y銀行 △△支店 普通預金
口座番号 △△△△△△
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

預貯金3
Z銀行 ⬜︎⬜︎支店 定期預金
口座番号 ⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.相続人Aは、前項の支払いを完了したあとの残余金(解約時までの利息を含む)を取得する。

上記以外にも預金口座がある可能性がある場合は、「判明している範囲で列挙」といったようにしておくと、あとで新口座が出たときに説明がつきやすいです。

2-2-3.すべての口座を解約し、合計額を割合で分ける

すべての口座を解約した合計金額を、「Aが3分の2、Bが3分の1」のように割合で分ける方法です。総額が利息等で変動しても、割合で精算できるため再協議を避けやすい利点があります。

この場合も代表者を決め、代表者が解約・払戻し手続きを行い、受領金の合計額から各相続人の取り分を算出して分配します。振込手数料の負担や、計算時の端数処理も定めておくと安心です。

遺産分割協議書への記載例:

1.被相続人名義の以下すべての預貯金については、相続人Aが3分の2、相続人Bが3分の1の割合で取得する。

預貯金1
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

預貯金2
Y銀行 △△支店 普通預金
口座番号 △△△△△△
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.相続人Aは、前項の預貯金の解約および払戻しの手続きを行い、受領した金員の合計額から相続人Bの取得割合に相当する金員を算出し、手続き完了後すみやかにBが指定する口座に振り込んで支払うものとする。
3.分割計算において1円未満の端数が生じた場合は、相続人Aがこれを取得する(または別途定める)。

2-2-4.代表者が全口座をまとめて受領し、一括で清算する(代表受領)

複数口座がある場合、代表者が解約・払戻し等の手続きを担い、受領金を協議内容に従って分配し、清算する方法です。相続人側の動きを一本化しやすい反面、代表者に負担と責任が集中するため、協議書で分配ルールと期限を明確にしておくことが重要です。

なお、金融機関の相続手続では、代表者が窓口に行けば足りる場合もあれば、金融機関所定書式への相続人全員の署名押印や印鑑証明書等が必要になる場合もあります。必要書類は事前に確認しましょう。

遺産分割協議書への記載例:

1.相続人Aは、被相続人名義の以下すべての預貯金(解約時までの利息を含む)に関する払戻請求権その他一切の権利を取得する。

預貯金1
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

預貯金2
Y銀行 △△支店 普通預金
口座番号 △△△△△△
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.相続人Aは、受領した金員の合計額の2分の1に相当する額を、相続人Bに対して支払うものとする。支払時期は、すべての預貯金の解約・払戻し手続き完了後、10日以内とする。
3.振込手数料の負担は、Aの負担とする(または別途定める)。

2-2-5.1人が全口座を取得し、ほかの相続人へ代償金を支払う(代償分割)

特定の相続人がすべての預金を取得し、その代わりとしてほかの相続人に代償金を支払う方法です。預金の取得と代償金の支払いを切り分けて整理できるため、取得者に資金余力がある場合には進めやすいことがあります。

協議書には、「代償分割であること」「代償金額」「支払期限」「支払方法(振込先)」を明記し、後日の説明ができる形にしておくと安心です。

遺産分割協議書への記載例:

1.相続人Aは、被相続人名義の以下すべての預貯金を取得する。

預貯金1
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

預貯金2
Y銀行 △△支店 普通預金
口座番号 △△△△△△
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

預貯金3
Z銀行 ⬜︎⬜︎支店 定期預金
口座番号 ⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.相続人Aは、前項の預貯金を取得する代償として、相続人Bに対し金500万円を支払うものとする。なお、支払いは令和◯年◯月◯日限り、Bの指定する口座に振り込んで行うものとする。

2-2-6.「この口座は妻、残りは割合」など方式を混ぜる

特定のメイン口座は配偶者が取得し、その他の口座は子どもたちで割合分配するなど、方式を組み合わせるパターンです。生活費の決済口座は配偶者が継続して使いたい、といったニーズに対応できます。

書き方が複雑になるため、「第1条で特定の口座を指定」「第2条で残りの口座の分割方法を指定」のように条項を分け、どの口座がどのルールに該当するかが明確になるように記載します。残りの口座について代表者が解約・分配する場合は、期限・手数料負担・端数処理も定めておくと安心です。

遺産分割協議書への記載例:

1.相続人Aは、以下の遺産を取得する。

預貯金1
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.前項以外の被相続人名義の以下すべての預貯金については、相続人Bと相続人Cが、それぞれ2分の1ずつの割合で取得する。なお、分割計算において1円未満の端数が生じた場合は、相続人Bがこれを取得する。

預貯金2
Y銀行 △△支店 普通預金
口座番号 △△△△△△
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

預貯金3
Z銀行 ⬜︎⬜︎支店 定期預金
口座番号 ⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

3.相続人Bは、前項の預貯金の解約および払い戻し手続きを代表して行い、受領金の合計額から相続人Cの取得分を算出して、手続き完了後10日以内にCが指定する口座に振り込んで支払うものとする。なお、振込手数料は相続人Cの負担(振込額から差し引く)とする。

2-3.パターン③特別な事情がある場合

相続手続きでは、遺産の全容がまだ分からない、急ぎで一部のお金が必要になるなど、イレギュラーな事情が起こり得ます。そのような場合でも、協議の対象財産を限定したり、費用留保のルールを定めたりすることで、遺産分割協議書を作成することは可能です。

ここでは、特別な事情に対応するための3つの書き方を紹介します。

2-3-1.一部だけ先に分け、残りはあとで決める

遺産調査が終わっていない場合や、特定の預金だけ先に解約して使いたい場合には、協議の対象財産を限定して合意する方法があります。協議書の本文で「本日協議したのは以下の財産に限る」と明記し、あわせて「本協議書に記載のない遺産は別途協議する」と定めておくのがポイントです。

遺産分割協議書への記載例:

1.相続人Aは、以下の遺産を取得する。
預貯金X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.本協議書に記載のない遺産、および後日判明した遺産については、相続人全員で別途協議して決定する。

2-3-2.葬儀代や税金支払いのために一定額を残しておく

葬儀費用や未払い医療費、相続税などの支払いに充てるため、預金から一定額を留保(取得・管理)してから残額を分ける方法です。誰が、何の費用として、いくらを充当するのかを明確にできるため、立替精算で揉めるのを防ぎやすくなります。

より丁寧にするなら、支払い後の「残額」や「不足」が生じた場合の精算方法も定めておくと安心です。

遺産分割協議書への記載例:

1.被相続人名義の以下すべての預貯金については、相続人Aが代表して解約・払戻し手続きを行う。

預貯金1
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

預貯金2
Y銀行 △△支店 普通預金
口座番号 △△△△△△
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.相続人Aは、解約に伴う受領金の中から、被相続人の葬儀費用として金200万円を取得し、その支払いに充てるものとする。
3.前項の費用を控除した残余金については、相続人Aと相続人Bが、2分の1ずつの割合で取得する。(※必要に応じて、支払後の残額・過不足の精算方法を定める)

2-3-3.結論が出るまで、管理方法だけ決めておく(共有管理)

誰がどの預金を取得するかの結論が出ていないものの、満期が来る定期預金の取扱いを先に決めたい、当面の管理方針を明確にしたい、といった場合に用いられる考え方です。

ただし、遺産分割協議書で管理方法を決めたとしても、口座の取引制限(凍結)が直ちに解除されるかどうかは金融機関の相続手続きの進み具合によります。緊急で払戻しが必要な場合は、預金の仮払い制度など別の手段が関係することもあるため、状況に応じて金融機関や専門家に確認しながら進めるのが安全です。

遺産分割協議書への記載例:

1.以下の遺産については、遺産分割協議が成立するまでの間、相続人Aが代表して管理保管するものとする。

預貯金
X銀行 ◯◯支店 普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯
口座名義人 被相続人 ◯◯ ◯◯

2.相続人Aは、必要な手続きを行い、以下の預金に係る受領金が生じた場合には、これを別口の預金口座にて保管する。3.当該預金の最終的な帰属および分配方法は、後日の遺産分割協議により決定する。

3.預金の分配方法を選ぶ際に知っておくべきポイント

預金を分ける方法にはいくつか種類があり、それぞれに良い点と注意すべき点があります。安易に決めてしまうと、あとから「手間がかかりすぎる」「手数料でもめた」といったトラブルになりかねません。

ここでは、代表的な分配方法のメリット・デメリットや、見落としがちな手数料のルールについて解説します。自分たちの状況に合った方法を選ぶためのヒントにしてください。

3-1.代表相続人が一括で払い戻しを受けるメリット・デメリット

代表者が手続きの窓口になると、来店・郵送対応の中心を一本化できるメリットがあります。銀行窓口に行くのが代表者一人で済むため、平日に時間が取れない相続人が多い場合に便利な点です。何度も全員で集まる必要がなく、スピーディーに進められます。

ただし、金融機関所定の相続手続書類について、相続人全員の署名押印や印鑑証明書の提出を求められるかどうかは、金融機関・手続内容・相続関係によって異なる点には注意してください。

関連記事:代表相続人が遺産を分配しないときに考えられる理由と対処法

3-2.銀行から各相続人の口座へ直接振込を依頼する際の手順

金融機関によっては、払戻金を相続人それぞれの口座へ振り分けて送金する取り扱いが可能な場合があります。銀行所定の「相続届」などの書類に、相続人全員が自分の振込先口座を記入し、実印を押して提出するという流れです。

この方法を選ぶと、代表者を経由せずにそれぞれがお金を受け取れるため、使い込みなどの不正を防げます。

ただし、具体的な手順や、所定書式への署名押印の範囲(相続人全員か、代表者中心か等)は金融機関ごとに異なります。事前に確認して進めるのが確実です。

3-3.分配時の振込手数料を誰が負担するか決めておく

意外と盲点になるのが、預金を振り分ける際にかかる振込手数料の負担者です。

「誰が負担するか」を事前に決めておかないと、数百円の手数料を巡って感情的なしこりが残ることもあります。一般的には、解約した預金の中から手数料を差し引き、残りを分けるケースが多いです。あるいは、振り込みを受ける相続人が各自で負担することもあります。

遺産分割協議書に「振込手数料は相続財産から支払う」や「受取人の負担とする」と一文入れておくと、細かい計算で迷わずに済みます。

4.遺産分割協議書完成後の銀行窓口での流れ

遺産分割協議書が完成しても、自動的にお金が振り込まれるわけではありません。実際に銀行の窓口へ行き、所定の手続きをおこなう必要があります。

銀行での手続きは、普段の預金引き出しとは違い、厳格な審査があるため時間がかかります。ここでは、具体的な手続きのステップを見ていきましょう。

4-1.銀行へ相続手続を申し出る

まずは、被相続人の口座がある銀行へ連絡し、相続が発生したことを伝えます。

連絡を入れると、その時点で口座は凍結され、入出金ができなくなります。いきなり窓口に行くのではなく、まずは電話で予約を取るか、Webサイトから手続きの案内を取り寄せるのが一般的です。

銀行によっては、支店ではなく「相続センター」という専門部署が対応することもあります。スムーズに進めるためにも、事前に電話で「遺産分割協議書による手続きをしたい」と伝え、流れを確認しておきましょう。

4-2.必要書類をそろえる

次に、銀行から案内された必要書類を漏れなく準備します。

一般的に必要となるのは、遺産分割協議書のほかに、被相続人の出生から死亡までがつながる戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、通帳やキャッシュカードなどです。とくに戸籍謄本は、集めるのに時間がかかるため早めの手配が必要です。

また、遺産分割協議書に捨て印は必須ではありません。捨て印を押すかどうかは相続人間の信頼関係や運用方針を踏まえて慎重に判断し、基本は「誤記のない内容に仕上げる」ことが重要です。

遺産分割協議書に不備がないか、改めて確認しましょう。

4-3.窓口で申請書(銀行所定書式)に記入・押印する

必要書類を持参して窓口に行き、銀行専用の「相続届(払戻請求書)」に記入します。

遺産分割協議書があっても、銀行内部の処理のために、専用の用紙への記入を求められるのが一般的です。この書類には、代表相続人の署名や実印の押印が必要になります。

ケースによっては、相続人全員の署名と実印を求められることもあります。誰のハンコが必要になるのか、事前に銀行へ確認しておくと二度手間を防げます。記入ミスを訂正するために、実印は必ず持参するようにしましょう。

4-4.書類を提出し審査を受ける

書類をすべて提出したら、銀行側での審査を待ちます。

通常の引き出しとは異なり、相続手続きはその場で完了するわけではありません。提出された戸籍謄本で相続関係を確認したり、遺産分割協議書の内容に法的な不備がないかをチェックしたりするためです。

書類提出後は金融機関側の審査があり、完了までの日数は金融機関や事案により異なります。余裕をもって早めに手続きを開始するのが安全です。

4-5.審査に通過したら払戻し・解約・名義変更などがおこなわれる

審査が無事に終わると、指定した方法で預金の払い戻しや名義変更がおこなわれます。

解約手続きの場合は、指定した口座に利息を含めた金額が振り込まれます。名義変更を選んだ場合は、被相続人の口座の名義が相続人の名前に変わります。

手続き完了後には、「計算書」などが郵送されるので、金額に間違いがないか必ず確認してください。これで銀行での手続きはすべて完了となります。大きな金額が動くため、最後まで気を抜かずに管理しましょう。

5.預金の遺産分割でよくある質問

預金の相続手続きは、法律のルールや銀行ごとの対応が絡み合うため、多くの人が疑問を抱くポイントでもあります。「こんなときはどうすればいいの?」と迷って手が止まってしまわないよう、よくある質問とその回答をまとめました。

トラブルを未然に防ぎ、スムーズに手続きを進めるための参考にしてください。

5-1.遺産分割協議がまとまる前に、葬儀代として預金を引き出せますか?

一定の金額までであれば、遺産分割協議が終わる前でも引き出すことが可能です。これを「預金の仮払い制度」といいます。

預金の仮払い制度では、遺産分割前でも、各相続人が一定範囲で単独払戻しを請求できます。払戻し可能額は、口座(定期は明細)ごとに「相続開始時の預金額 × 1/3 × 払戻しをする相続人の法定相続分」で算定し、同一金融機関からの払戻しには上限150万円があります。

5-2.亡くなったあとに付いた預金利息はどのように分ければいいですか?

相続開始後、遺産分割が成立するまでに発生する預金利息については、裁判例・実務上、原則として各共同相続人が法定相続分等に応じて取得すると説明されることが多いです。

一方で実務では、少額の利息を別建てで分配して清算する手間を避けるため、相続人全員の合意のもと、遺産分割協議書に「解約時までの利息を含む」旨を明記し、当該口座を取得する相続人に利息相当分もまとめて帰属させる形で整理することがよくおこなわれています。

そのため、口座を単独で取得させる設計にする場合は、遺産分割協議書に「当該預金および解約時までの利息を含む払戻請求権その他一切の権利を取得する」などと記載しておくと、利息分の扱いで再協議が必要になるリスクを減らし、手続が進めやすくなるでしょう。

5-3.1円単位で割り切れない端数が出た場合、どうすればいいですか?

割合分割をすると、計算上「1円未満の端数(小数点以下)」が生じることがあります。実際の払戻金は1円単位なので、端数の扱い(切捨・切上・特定の相続人に帰属など)を協議書で決めておくと、精算時の迷いを防げます。

5-4.協議書を作った後に「新たな銀行口座」が見つかった場合はどうしますか?

原則として、新たに判明した口座について、追加の協議(追加の協議書作成)で対応できます。

あらかじめ「本協議書に記載のない財産の取扱い」を定めておく方法もありますが、金融機関の手続きでは口座の特定を求められることもあるため、実際の運用は取引先に確認すると確実です。

5-5.銀行は、各相続人の口座に直接振り分けて振り込んでくれますか?

多くの銀行で対応していますが、金融機関によって取り扱いが異なるため確認が必要です。銀行所定の依頼書に、それぞれの相続人の振込先を書く欄があれば、直接振り込んでもらえます。

ただし、払戻金の受取方法は金融機関や手続き内容によって異なります。希望する受取方法が可能か、手数料の扱いも含めて事前に取引先へ確認するのが確実です。

5-6.ネット銀行の預金があるのですが、通帳がない場合はどう手続きしますか?

キャッシュカードや郵便物から口座情報を探し、Webサイトや電話で相続センターへ連絡します。

ネット銀行には紙の通帳がないため、スマホのアプリやキャッシュカード、あるいは銀行から届いたメールなどを手がかりに口座番号を特定する必要があります。もしログインできない場合は、銀行に電話をして口座の有無を照会しなければなりません。

口座番号がわかれば、あとは通常の銀行と同じように必要書類を取り寄せます。やり取りは郵送やWeb上が中心となるため、案内をよく読んで進めましょう。

6.まとめ

預金の遺産分割は、単に「誰がもらうか」を決めるだけでなく、金融機関が迷わずに処理できる正確な情報を記載することが重要です。銀行名や口座番号の特定はもちろん、利息や端数の扱い、振込手数料の負担まで細かく決めておくことが、手続きの二度手間や将来的な親族間のトラブルを防ぐカギとなります。

もし、口座数が多くて整理しきれない場合や、複雑な分配方法で書き方に不安がある場合は、無理に自分たちだけで完結させようとせず、専門家の力を借りるのも賢明な選択です。司法書士などの専門家に相談し、不備のない確実な書類を作成して、安心かつ円満な相続手続きを実現させましょう。

司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、遺産相続のご相談をいつでもお受けしております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。

監修者 池部 翔司法書士・行政書士

司法書士法人・行政書士鴨川事務所 代表

相続手続きは複雑で、自己判断により重大なトラブルを招くことがあります。当事務所では、丁寧に相談を受けたうえで、専門知識を活かし、最適な解決策の提案から実行までをサポートしています。

京都司法書士会・京都府行政書士会所属

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