遺産相続

相続放棄の期間を知らなかった!期間が過ぎても相続放棄が認められる条件

2025.06.02

被相続人が多額の債務を抱えていたとき、自分の財産を守る制度の一つが相続放棄です。しかし相続放棄は3カ月に申述しなければならず、この期間を超えると手続きできなくなります。

もし期間の存在を知らずに過ぎていた場合、手続きができるか気になる人もいるでしょう。この記事では、相続放棄に関するルールを詳しく紹介します。

知らないうちに相続放棄の期間が過ぎてしまった方や、相続放棄の期限が迫って焦っているという方は、ぜひ最後までご覧ください。

1.相続放棄の期間は「相続開始の事実を知った日から3ヶ月」

相続放棄ができる期間(熟慮期間)は、法律によって「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」と厳格に定められています。

いつから3カ月のカウントダウンが始まるのか、その「起算点」を正しく理解することが非常に重要です。この期限を過ぎると、原則として、借金も含めて全ての遺産を相続したと見なされてしまいます。

1-1.相続開始の事実を知った日から3ヶ月以内に申述が必要

相続放棄をする場合は、相続開始の事実を知った日から3ヶ月以内に申述をしなければなりません。この期限を過ぎると、原則として、借金も含めて全ての遺産を相続したと見なされてしまいます。

相続放棄の期限である3カ月のカウントが始まるのは、「①被相続人が亡くなった事実」と、「②それによって自分が相続人になったという事実」の、両方を知ったときからです。

そのため、単に親族が亡くなったというだけでは、相続放棄の熟慮期間は開始しません。ご自身が、その相続の当事者になったと知った日が、相続放棄を検討するスタートラインとなります。

1-2.相続開始の事実を知った日から3ヶ月以内の具体的な事例

「相続の開始を知った日」がいつになるのか、具体的な事例を用いて解説していきます。

たとえば、同居する親が亡くなり、亡くなったという事実をすぐに知った場合は、以下のようになります。

相続開始日2025年1月1日水曜日(被相続人の死亡)
相続開始を知った日2025年1月1日水曜日(相続人が死亡を知った日)
相続放棄の申述期限2024年4月1日火曜日(相続開始を知った日から3ヶ月後)

次に、疎遠だった親が亡くなり、死後しばらくしてから亡くなったことを知った場合は以下のようになります。

相続開始日2025年1月1日水曜日(被相続人の死亡)
相続開始を知った日2025年1月12日日曜日(相続人が死亡を知った日)
相続放棄の申述期限2024年4月14日月曜日(相続開始を知った日から3ヶ月後)

上記のケースでは、本来の期限は4月12日となりますが、期限が土日祝や年末年始で家庭裁判所が開いていない場合は、次の平日が期限となります。

2.「期間を知らなかった」だけでは相続放棄は認められない

相続放棄には、「自分が相続人になったことを知った時から3カ月以内」という申述期間がありますが、単に「その期間を知らなかった」という理由だけでは、原則として期間経過後の相続放棄は認められません。

この理由について、法律そのものの考え方も踏まえて紹介します。あわせて相続放棄ができない場合、法律上はどのように扱われるかも押さえてください。

2-1.法律は原則として「無知」を守ってくれない

相続放棄の期間に限らず、日本の法律は、原則として「法律を知らなかった」という個人の事情を理由に、その責任を免除してくれることはありません。もし「知らなかった」という言い分が認められてしまうと、法律の安定性が損なわれ、社会全体が混乱してしまうためです。

「法律を知っているのが当たり前」という前提のもとに、社会のルールは作られています。そのため、相続放棄の3カ月という期間(熟慮期間)も、知っていたかどうかに関わらず、相続の開始を知ったときから進行してしまいます。この「知らなかった」が通用しない、という原則をまず理解しておきましょう。

2-2.相続放棄の期間が過ぎたら単純承認とみなされる

3カ月以内に相続放棄を申述しなければ、当該相続人は「単純承認した」と解釈されます。

単純承認とは、プラスの財産とマイナスの財産の双方を相続することです。そのため被相続人が多額の借金を抱えていたとしても、単純承認をした相続人はすべて受け継がないといけません。

借金を相続すれば、被相続人の債権者は、相続人に対して債務の返済を要求できます。借金返済から逃れるためには、期間内に相続放棄を済ませる必要があるのです。

2-3.家族と絶縁していても相続は発生する

たとえ長年、家族と疎遠であったり、絶縁状態であったりしても、法律上の親子・兄弟関係がある限り、相続権は自動的に発生します。

相続の権利や義務は、戸籍上の関係にもとづいて、法律で機械的に決まります。そのため、個人の感情や、実際の交流の有無は一切関係ありません。

何十年も会っていなかった親が亡くなり、ある日突然その親が作った借金の督促状が届く、というケースも実際にあります。疎遠であっても、相続人になったという事実を知った時から、3カ月の期間はスタートします。

関連記事:相続を知らせないのはNG?所在不明の相続人に連絡をとる方法

2-4.相続放棄の意思表示をしただけでは法的効力はない

ほかの相続人との話し合いの場で「私は遺産を放棄します」と口頭で伝えたり、その旨の念書にサインしたりしただけでは、相続放棄は認められません。相続放棄をするときは、必ず家庭裁判所にて相続放棄の申述をおこなう必要があります。

相続人間の私的な合意は、あくまで「相続分の放棄」であり、借金の支払い義務はなくなりません。債権者に対して「私は相続を放棄した」と主張するためには、必ず家庭裁判所での手続きが必要です。

3.期間が過ぎても相続放棄が認められる条件

相続放棄の期間を知らなかった場合でも、正当な理由があれば、家庭裁判所は期間超過後の申述を認めることもあります。以下のようなケースです。

  • 被相続人が死亡したことを知らなかった
  • 被相続人の死亡を知ったのが最近だった
  • 熟慮期間の伸長を申し立てた
  • 正当な理由により遺産がないと信じていた
  • 先順位の相続人が相続放棄したことを知らなかった
  • 借金の存在を知らなかった

一つずつ見ていきましょう。

3-1.被相続人が死亡したことを知らなかった

被相続人の死亡を認知していなかった場合、相続放棄が認められる確率は高まります。その理由は、民法で相続放棄の期間の起算点が「相続の開始があったことを知ったとき」と定められているためです。

自身が家族とほとんど連絡を取っていなければ、親が亡くなったことに気づかないのも珍しくありません。

ただし相続放棄が認められるには、家庭裁判所に「事情説明書」を提出する必要があります。事情説明書には、親の死亡を知らなかった理由について詳しく記載する必要があります。場合によっては、司法書士をはじめとした専門家と相談したうえで記載しましょう。

3-2.被相続人の死亡を知ったのが最近だった

上記のケースと似ていますが、被相続人の死亡を知って間もない場合も、相続放棄が認められる条件の一つです。相続の開始を知ってから3カ月以内が期限となるので、その間に手続きを済ませれば問題ありません。

たとえば親が10年前に亡くなったとしても、その事実を知ったのが1カ月前であれば相続放棄が可能です。起算点に関するルールがやや紛らわしいので、司法書士ともよく確認したうえで対処しましょう。

3-3.熟慮期間の伸長を申し立てた

相続財産の調査に時間がかかり、3カ月の期限内に相続放棄すべきかどうかの判断ができない場合は、あらかじめ、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申し立てることができます。

熟慮期間伸長の申し立てが認められれば、裁判所の判断で、さらに数カ月間期間を延長してもらうことが可能です。これにより、焦って判断を誤るリスクを避け、落ち着いて調査や検討をおこなえます。

3-4.先順位の相続人が放棄したのを知らなかった

民法では被相続人との関係から、誰が優先的に相続を受けられるかが定められています。

優先順位被相続人から見た続柄(※)
第一順位
第二順位直系尊属
第三順位兄弟、姉妹

※配偶者は必ず相続人となる

たとえば、自分が被相続人から見た弟と仮定しましょう。この場合は「兄弟」に該当するため、第二順位の者が全員相続放棄しない限りは、相続する権利がありません。

しかし第二順位の者が、第三順位にあたる者へ何も連絡せず相続放棄をしたとします。このケースでは、第三順位の者が相続の存在を知らないのは無理もないでしょう。当該事例に該当する場合でも、相続の事実を知ったあとは3カ月以内に手続きしないといけません。

関連記事:【知らない間に相続人になっていた】やるべきことや対処法について

3-5.正当な理由により遺産がないと信じていた

最高裁判例(昭和59年4月27日)によると、遺産(負債)がないと信じていたことに正当な理由があるときも、相続放棄が認められる余地はあります。

参考:昭和59年4月27日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 大阪高等裁判所 昭和56(ネ)341

中には、家族に黙って金融機関からお金を借りている被相続人もいるかもしれません。その事実を知らなかった相続人に対し、相続放棄の機会を奪うのはあまりにも酷な話です。

判例では、生活歴や被相続人との交際状況を見たうえで、財産調査を期待するのが著しく困難な場合に相続放棄ができると解釈しています。これらのケースに該当しそうな場合は、司法書士と相談しながら手続きを検討してみましょう。

3-6.借金の存在を知らなかった

相続人が借金の存在を知らなかった場合も、相続放棄の期間を延長することができる場合があります。ただし、以下のような事情があり、借金の存在を知らなかったことが認められる必要があります。

  • 被相続人の生前にほとんど交流がなかった、絶縁していた
  • 借金に関する書類が見つからなかった、もしくはすでに捨てられていた

客観的な証拠が必要となる点に注意しなければなりません。

4.相続放棄の期間が過ぎようとしているときの対処法

相続放棄できるのが3カ月以内であることを知らず、期限が過ぎようとしているときは、主に2つの対処法があります。

  • 「相続放棄申述書」の提出を優先させる
  • 期間延長を申し立てる

それぞれの対処法において、押さえたほうがよいポイントを解説します。

4-1.「相続放棄申述書」の提出を優先させる

期限が間近に迫っていたら、とりあえず「相続放棄申述書」の提出を優先させてください。3カ月という期間は、あくまで「申述書を提出するまで」の時間制限です。つまり「相続放棄申述書」が届いていれば、ルール上は相続放棄の申請をしたとみなされます。

どうしても必要書類が揃わない場合は、あらかじめ家庭裁判所にその旨を連絡しましょう。取得したタイミングで、順次家庭裁判所に提出してください。

4-2.期間延長を申し立てる

手続きが間に合わないときは、期間延長を申し立てることも検討してください。期間延長を望む場合は、家庭裁判所で手続きしないといけません。どういった手続きが必要になるかを詳しく解説します。

4-2-1.具体的な手続き方法

期間延長を申し立てる場合も、家庭裁判所での手続きが必要です。費用として800円分の収入印紙と連絡用の郵送代を用意しないといけません。被相続人の住民票除票や関係性を示す戸籍謄本も必要になるので、あらかじめ発行を済ませておきましょう。

期間延長についても、自身に相続があることを知った日から3カ月以内に申立書を届ける必要があります。期限がないと勘違いしないように注意してください。

4-2-2.期間延長は認められないケースもある

期間延長の申立てをしても、必ず認められるわけではありません。民法上では、3カ月という期間内に相続放棄するのが原則と規定されているためです。

天災事変のため、手続きが遅れたのなら家庭裁判所も考慮してくれる可能性が高いでしょう。しかし手続きを過失により忘れただけの場合、その責任は相続人側にあります。家庭裁判所によって判断も変わりますが、過度な期待は持たないようにしてください。

5.相続放棄の期間が間近でも避けるべき行為

相続放棄の期限が迫っていると、手続きを進めるのに焦りが見えてくるでしょう。しかし期限が間近に迫っていても、以下の行為は避けるようにしてください。

  • 被相続人が持つ遺産を隠す
  • 被相続人の財産を処分する

それぞれ解説していきます。

5-1.被相続人が持つ遺産を隠す

まず避けるべき行為の一つとして、遺産隠しが挙げられます。現金や宝石などの物品が残っていると、これらを受け取りたいと考える人もいるでしょう。しかし相続放棄を選んだ場合、マイナスの財産だけではなくプラスの財産も手放さないといけません。

遺産隠しは、ほかの相続人による申告や税務調査によって見破られる可能性が十分あります。相続税の申告もしていないので、追徴課税の対象にもなります。刑法の特例により、刑事事件に問われる確率は低いものの、民事上においては損害賠償金を請求されかねません。

財産を持ち出したケースでも、遺産隠しと判断される恐れはあります。現金や物品を持ち出すことはせず、なるべくそのままの状態を保ちましょう。

5-2.被相続人の財産を処分する

相続放棄をする場合には、被相続人が有していた財産を処分することも避けてください。財産の処分は単純承認とみなされてしまい、相続放棄の権利を失います。

主に、以下のような行為が財産の処分に該当します。

  • 被相続人の預金口座からお金を引き出した
  • 被相続人のお金を生活費に充てた
  • 被相続人が所有していた不動産を売却した
  • 遺品整理をした(家電やパソコンなどを売却)
  • 被相続人の住んでいた賃貸物件を解約した
  • 被相続人の携帯電話を解約した

ほかにも入院費の支払いや債務の返済などを、被相続人の財産からすることも処分とみなされる可能性があります。しかしここで紹介した例は、見解によって意見も分かれます。相続放棄をしたいのであれば、まずは財産に手をつけないことを心がけましょう。

6.知らないうちに相続放棄の期間が過ぎていたら司法書士への相談がおすすめ

もし、知らないうちに相続放棄の3カ月の期限が過ぎてしまった場合は、一人で諦めてしまう前に、相続の専門家である司法書士に相談することをおすすめします。

期間が過ぎたあとの相続放棄は、法的な専門知識と、裁判所を納得させるための高度な主張が不可欠です。司法書士に相談することで、あなたの心強いパートナーとなってくれます。

6-1.期間を過ぎた場合の選択肢を確認できる

司法書士に相談すれば、あなたの状況を法的な観点から分析し、「今からでも相続放棄が認められる可能性があるか」といった選択肢を正確に確認できます。

期限後の相続放棄は、必ずしも不可能ではありません。司法書士は、過去の判例などにもとづき、あなたのケースで、裁判所に相続放棄が受理される可能性がどのくらいあるかを、客観的に判断してくれます。闇雲に不安になるのではなく、まずは専門家に相談することを検討しましょう。

6-2.期限後の事情に基づく対応策を検討してくれる

司法書士は、あなたが期限内に相続放棄できなかった「やむを得ない事情」を、法的に説得力のある形で主張するための、具体的な対応策を検討してくれます。

たとえば、「故人とは長年絶縁しており、借金の存在を知る由もなかった」といった事情を、家庭裁判所に提出する「事情説明書」として論理的に作成します。あなたの主張を、裁判所が納得する「法的な主張」へと昇華させてくれるのが専門家の役割です。

6-3.相続手続きの進行状況に応じたアドバイスをしてもらえる

司法書士は、相続手続き全体の進行状況を把握したうえで、最善のアドバイスをしてくれます。

たとえば、あなたが気づかないうちに、故人の預金を使ってしまっているなど、「単純承認」と見なされかねない行為がなかったかをチェックします。もし、すでに単純承認が成立している可能性が高い場合は、相続放棄ではなく、その後の債務整理といった次の対応を検討し、手続き全体をスムーズに導いてくれます。

6-4.手続きを一括して任せられる

司法書士に依頼すれば、家庭裁判所に提出する複雑な書類の作成から、万が一不動産を相続することになった場合のその後の名義変更(相続登記)まで、相続に関する一連の手続きを一括して任せられます。

相続放棄の期限が過ぎたあとの手続きは、精神的な負担が大きいものです。専門家に全てを任せることで、あなたはその負担から解放され、日常生活に集中することができます。面倒な手続きを丸ごと引き受けてくれる安心感は、司法書士に依頼する大きなメリットです。

7.まとめ

相続放棄に期間があることを知らなくても、期限が過ぎたら家庭裁判所は申述を受理してくれません。正当な理由がない限りは、期間内に申述する必要があります。

期限が迫っているのであれば、ひとまず申述書を提出するか、期間延長の手続きを済ませましょう。司法書士に確認し、状況を打開できるようなアドバイスをもらってください。

また遺産隠しや財産の処分をすると、期限内に書類を揃えても相続放棄はできません。何が単純承認にあたるのかを、あらかじめ調べるようにしましょう。

司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。

監修者 池部 翔司法書士・行政書士

司法書士法人・行政書士鴨川事務所 代表

相続手続きは複雑で、自己判断により重大なトラブルを招くことがあります。当事務所では、丁寧に相談を受けたうえで、専門知識を活かし、最適な解決策の提案から実行までをサポートしています。

京都司法書士会・京都府行政書士会所属

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