遺産相続

相続手続きをしなかったらどうなる?放置するリスクについて解説

2025.06.11

親族が急に亡くなると、葬儀や役所の手続きで忙しくなって相続に手が回らない人も多いでしょう。相続の手続きをしないまま放置していると、その後の生活においてさまざまなリスクが生じます。

そこでこの記事では、以下の内容を解説します。

  • 相続手続きの概要
  • 相続手続きしなかったことで生じるリスク
  • 相続手続きを進める流れ

記事の後半では、相続手続きを専門家である司法書士に依頼するメリットについても解説しています。今後相続が発生する可能性の高い方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

1.相続手続きとは

相続手続きとは、被相続人の財産を引き継ぐための手続きです。

仮に親族が亡くなっても、自動的に財産を譲り受けるわけではありません。家庭裁判所や法務局、金融機関で手続きを済ませることで初めて相続の効力が発生します。

2つのケースに分けて、どのような手続きが必要になるかを解説しましょう。

1-1.遺産分割協議によって相続分を決定するケース

民法には、相続分に関する規定が定められています(民法第900条)。しかし遺産分割協議により、自由に相続人の取り分を決めることも可能です。

遺産分割協議をする際には、原則相続人全員が参加しなければなりません(相続放棄する者は除く)。話し合いがまとまったら、法務局や税務署等に遺産分割協議書を提出する必要があります。

関連記事:遺産分割協議書を作成しないとどうなる?起こりうる6つのトラブル例

1-2.被相続人が遺言書を作成していたケース

被相続人が遺言書を作成した場合、相続分はその内容に従います。まずは遺言書が下記のどの種類に該当するかをチェックしてください。 

  • 自筆証書遺言書
  • 公正証書遺言書
  • 秘密証書遺言書

自筆証書遺言書と秘密証書遺言書の場合、相続人らが勝手に開封してはいけません(5万円以下の過料が発生します)。これらは、開封前に家庭裁判所にて検認を受ける必要があります。

2.相続手続きしなかったことで生じる10個のリスク

ここからは、相続手続きをしなかったことによって起こりうるリスクについて、以下10個の項目に分けて解説していきます。

  • 不動産相続の罰則が適用される
  • 預金では休眠預金等活用法が適用される
  • 民事訴訟を起こされるリスクも
  • 相続税を延滞してしまう
  • 遺留分の請求ができなくなる
  • 被相続人が抱えていた借金の返済義務が生じる
  • 相続登記が複雑になる
  • 株式に関する権利を失う
  • 相続回復請求権・取戻権を行使できなくなる
  • 相続不動産関連で不利になる

ひとつずつ見ていきましょう。

2-1.不動産相続の罰則が適用される

相続財産が不動産である場合、相続登記を怠ると罰則が適用されます。2024年4月施行の民法改正により、3年以内に相続登記しない者には10万円以下の過料が科せられます。

過料はあくまで行政罰であるため、仮に支払っても前科が付くわけではありません。ただし経済的に負担がかかるほか、法律上では義務とされているので必ず登記を済ませましょう。

2-2.預金では休眠預金等活用法が適用される

被相続人の身辺整理をしていたところ、10年以上使っていない預金通帳を発見する可能性もあります。このような「休眠預金」も、休眠預金等活用法により払い戻しの対象となります(2009年1月1日以降に入出金したものに限る)。

しかし相続手続きをしなければ、休眠預金の払い戻しが請求できません。結果的に財産の取り分が少なくなるので、相続と併せて請求の手続きをするのをおすすめします。

2-3.民事訴訟に発展する可能性がある

たとえば、老朽化した相続不動産を放置していると、屋根が落ちて近隣住民を怪我させる恐れもあります。仮に登記が済んでいなくとも、被害者は相続人に損害賠償の請求が可能です。こうした事故を起こさないためにも、手続きを済ませて不動産の修繕を済ませましょう。

2-4.相続税を延滞してしまう

相続手続きを済ませないと、相続税を納められずに延滞するリスクが高まります。相続税の納付期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内です。

納付期限に間に合わない場合、延滞税や無申告加算税といったペナルティが課されます。ペナルティから逃れられる対処法もないので、期限内に間に合うよう手続きしましょう。

2-5.遺留分の請求ができなくなる

遺産分割協議や遺言で相続分が決定しても、各相続人には一定の財産取得を請求できます。この取得分を遺留分と呼びますが、請求について以下の時効が設けられています。

  • 相続の開始および遺留分の侵害を知った日から1年
  • 相続の開始から10年

長期にわたって放置していると、遺留分の請求ができなくなるので注意してください。

2-6.被相続人が抱えていた借金の返済義務が生じる

ケースによっては、被相続人が多額の借金を抱えている可能性もあります。もし返済が難しいのであれば、相続放棄で財産を引き継がないようにするのが一般的です。

しかし相続放棄も、3カ月以内と申告期限が設けられています。3カ月以内に申告をしない場合は、債権者の請求にも応じなければなりません。

2-7.相続登記が複雑になる

主に不動産相続が該当しますが、相続登記が複雑になる点も放置するリスクの一つです。相続登記を長期間おこなわない場合、相続人が世代を超えて増加します。たとえば、被相続人(亡くなった方)の子どもがさらに亡くなり、その子ども(孫)が新たな相続人となることで、相続人の数が増え、特定が難しくなります。

また、所有権の帰属が不明確になり、第三者との取引や不動産の処分が難しくなります。相続人間での権利関係が複雑化し、トラブルの原因となることもあるため注意してください。

2-8.株式に関する権利を失う

被相続人が上場株式を保有している場合、証券会社に対して名義変更の届出が必要です。しかし証券会社から通知が来ているにもかかわらず、手続きをしなければ上場株式を売却される恐れがあります。

株主が配当金を5年以上受領していないと、所在不明株主とみなされてしまうためです。株などの有価証券も財産の一つになるので、忘れずに手続きしましょう。

2-9.相続回復請求権・取戻権を行使できなくなる

遺言や遺産分割協議に従わず、他の相続人が自身の相続分を不当に侵害するケースもあるかもしれません。

この場合、侵害された本人側は相続回復請求権や取戻権を行使できます。ただしこれらの請求権は、次の期間内に行使しなければなりません。

  • 侵害を知ったときから5年
  • 相続の開始から20年

期間内に手続きを完了できるよう、なるべく早く対応しましょう。

2-10.相続不動産関連で不利になる

相続手続きを放置していると、相続不動産関連で不利になる場合も考えられます。その例の一つとして挙げられるのが固定資産税の増額です。

住宅用の土地の場合、一定の面積に収まれば固定資産税は1/6(6分の1)に軽減されます。ただし管理を怠った結果、特定空き家に認定されると減額の対象になりません。相続手続きを怠ることで、固定資産税が6倍に増額する可能性もあるというわけです。

3.相続手続き関連で期限があるもの一覧

相続手続きには、種類ごとに期限が定められています。具体的な期間は次のとおりです。

相続手続きの種類期限提出先など
死亡届の提出死亡の事実を知った日から7日以内市区町村役場
年金受給停止の手続き厚生年金:10日以内
国民年金:14日以内
年金事務所など
相続税の申告相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内税務署
相続放棄・限定承認3カ月以内家庭裁判所
故人の所得税の準確定申告相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内税務署
遺留分侵害額の請求相続の開始と遺留分侵害を知った時から1年以内他の相続人
不動産の名義変更(相続登記)相続の開始を知った時から3年以内法務局

特に相続税の申告が遅れてしまうと、延滞税が発生する可能性もあります。期間内に手続きを済ませられるよう、入念に計画を立ててください。

4.相続手続きを進める流れ

相続手続きは、基本的に以下の流れに沿っておこないます。

1.被相続人の資産状況を確認する
2.遺言書の有無を確認する
3.遺産分割協議や名義変更を実施する
4.法務局等に遺産分割協議書を提出する
5.相続税を納付する

それぞれのプロセスごとに必要な手続きを解説します。

4-1.被相続人の資産状況を確認する

相続手続きをする中で、まずは被相続人の資産状況を確認しなければなりません。特に被相続人が、親族に黙って多額の借金を背負っていないかを細かくチェックしてください。

借金に気付かず相続してしまうと、債権者から返済を請求されてしまいます。場合によっては相続放棄や限定承認も選択肢の一つになるので、入念に資産状況を調査しましょう。

4-2.遺言書の有無を確認する

資産状況とともに、遺言書の有無も確認が必要です。被相続人の遺言は、原則として法定相続や遺産分割協議よりも優先されます。

被相続人が大事なものを保管していた場所などに、遺言書がないかを探してみましょう。公正証書遺言書であれば、公証役場に原本が保管されているため検索をかけることも可能です。

4-3.遺産分割協議や名義変更を実施する

資産状況を確認し、遺言書がなかったら相続人全員で遺産分割協議をします。必ず全員の参加が必要になるので、他の相続人にも連絡を取ってください。仮に相手が連絡を無視する場合は、家庭裁判所に調停を申し出て遺産分割を進められます。

もし財産(主に不動産)を相続したら、必ず自分の名義に変更します。上述したとおり、相続登記は義務となっているので忘れずに対応してください。

4-4.法務局等に遺産分割協議書を提出する

遺産分割協議がまとまったら、書類を提出します。遺産分割協議書の提出先は、どういった手続きをするかで異なります。

手続きの内容提出先
不動産の相続登記法務局
相続税の申告税務署
預金の名義変更金融機関
有価証券の名義変更証券会社
自動車の名義変更運輸支局

対応の抜け漏れがないよう、提出先をよく確認するようにしてください。

4-5.相続税を納付する

遺産分割協議が完了したら、相続人ごとの相続税を計算します。相続税は一括で全額納めるのが原則です。主な納付方法として、以下の方法があります。 

  • 税務署に直接納める
  • 金融機関で納付手続きする
  • クレジットカードで納める(1,000万円未満の制限あり)
  • コンビニで納付する(30万円以下の制限あり)

上述したとおり、相続税は10カ月以内に納めなければなりません。この期間の変更はできませんが、延納や物納といった対策も可能です。

5.注意が必要な相続手続きのパターン

相続人の中に、ご自身の意思で法律行為をおこなえない方がいる場合、相続人同士の話し合いだけで、遺産分割協議を進めることはできません。ここでは、とくに注意が必要な3つのパターンと、その対処法について解説します。

5-1.認知症の相続人がいる

相続人のなかに認知症の方がいて、遺産分割の内容を理解したり、自分で判断したりする能力(意思能力)がない場合、家庭裁判所に申し立て、「成年後見人」を選任してもらう必要があります。意思能力がない状態でおこなった遺産分割協議は、あとから無効になってしまうからです。

成年後見人は、本人の代理人として、本人の利益を最優先に考えながら、遺産分割協議に参加します。勝手に他の相続人が代筆するなどして進めてしまうと、大きなトラブルになるため、必ずこの正規の手続きを踏んでください。

関連記事:認知症の相続人がいる場合の相続手続きはどうなる?問題点と対処法を解説

5-2.未成年の相続人がいる

未成年の相続人がいる場合、その相続人の代理として、親が遺産分割協議に参加することは原則としてできません。

親と未成年の子が、同時に相続人となる場合、両者の間には「利益相反(りえきそうはん)」の関係が生まれます。たとえば、親の取り分を増やせば、子の取り分が減ってしまうからです。

そのため、家庭裁判所に申し立て、その未成年の子のためだけに、中立的な立場で代理を務める「特別代理人」を選任してもらう必要があります。未成年の相続人が持つ正当な権利を守るための、非常に重要な手続きです。

5-3.行方のわからない相続人がいる

相続人のなかに、長年連絡が取れず、どこにいるか分からない方がいる場合でも、その人を除外して遺産分割協議を進めることはできません。遺産分割協議は、相続人全員の参加が絶対条件だからです。

この場合、家庭裁判所に申し立て、その行方不明の方の財産を、本人に代わって管理する「不在者財産管理人」を選任してもらう必要があります。この不在者財産管理人が、行方不明の相続人の代理として遺産分割協議に参加することで、初めて、法的に有効な話し合いを進めることが可能になります。

また、失踪宣告を申し立てることも手段の一つです。

関連記事:失踪宣告を自分でおこなう方法とは?手続きの流れや必要書類を解説

6.相続手続きは司法書士への依頼も検討しよう

相続手続きに悩んでいたら、司法書士への依頼もおすすめします。司法書士は登記を中心に、さまざまな相続手続きへの対応が可能です。書類作成や遺言に関する相談もできるので、手続きする中で困りごとがあったら依頼を検討してみてください。

ただし司法書士は、完全な代理人として認められるわけではありません。書類作成は一任できるものの、家庭裁判所や法務局への申請は本人がおこなう必要がある点に注意してください。

7.まとめ

相続手続きを怠っていると、生活においてさまざまなリスクが生じます。所有権を第三者に主張できなくなる恐れがあるほか、相続税を納められずに延滞税が発生することもあります。

被相続人の死亡が判明したら、できる限り早めに手続きをしてください。一人で手続きせず、司法書士と相談しながら対応するとよいでしょう。

司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。

監修者 池部 翔司法書士・行政書士

司法書士法人・行政書士鴨川事務所 代表

相続手続きは複雑で、自己判断により重大なトラブルを招くことがあります。当事務所では、丁寧に相談を受けたうえで、専門知識を活かし、最適な解決策の提案から実行までをサポートしています。

京都司法書士会・京都府行政書士会所属

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