遺言書

遺言書の保存期間と有効期限|保存期間内でも遺言書が無効になるケース

2026.04.01

「遺言書に保存期間はあるのかを知りたい」

「公正証書遺言・自筆証書遺言それぞれの保管期間や扱いの違いを知りたい」

「法務局で保管した場合の保存期間や、いつまで有効なのかを知りたい」

遺言書を作成するにあたって、上記のような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

遺言書は種類によって保存期間が異なり、公正証書遺言は遺言者の死後50年間、自筆証書遺言は実務上は遺言者が140歳〜170歳になるまで保管されます。

本記事では、遺言書の保存期間と有効期限を解説します。

保存期間を過ぎた遺言書がどうなるかや、遺言書の保存期間内でも内容が無効になるケースもご紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。

1.遺言書に有効期限はある?

遺言書には法律上の有効期限はなく、作成後に内容が無効になる特定の事情が生じない限り、遺言者が亡くなるまで効力を持ち続けます。ただし、保管している機関によって定められた保存期間があり、期間を過ぎると原本が廃棄される場合があります。

有効期限と保存期間はまったく別の概念であるため、両方の違いをしっかり理解しておくのが大切です。

2.遺言書の保存期間

遺言書の保存期間は、公証役場・法務局・信託銀行・専門家など、預け先ごとに定められたルールがあります。

ここでは、以下の4点に分けて、遺言書の保存期間を詳しく解説します。

  • 公正証書は実務上140〜170年保管される
  • 自筆証書を遺言者の死亡後50年間預かる
  • 画像データをデジタルは150年間残る
  • 信託銀行や弁護士との個別契約で定める

保存期間が終了すると遺言書の原本が失われるリスクもあるため、保管先の選択は慎重におこないましょう。ひとつずつ解説します。

2-1.公正証書は実務上140〜170年保管される

公証役場で作成される公正証書遺言の保管期間は、法令上(公証人法施行規則)は20年と定められています。しかし、実際には20年では短すぎるため、実務上は遺言者が140歳〜170歳になるまで、原本が破棄されずに保管されています。

この「140年〜170年」という幅は、公証実務において以下の3つの基準のうち最も長くなるものが適用されるためです。

①遺言者の死亡後50年

②証書作成後140年

③遺言者の生後170年

たとえば50歳で遺言を作成した場合、②の「証書作成後140年」のほうが③の「生後170年」より保存期間が長くなります。一方、20歳で作成した場合は③の「生後170年」の方が長くなります。つまり遺言を作成した年齢によってどの基準が最長になるかが異なるため、結果として「140年〜170年」という幅のある表現になるのです。

公正証書遺言は法律上の明確な保存期限は定められていませんが、相続手続きに支障が生じないよう長期間にわたって管理される仕組みです。実質的に一生涯にわたって安全に保管されると考えてよいでしょう。

参考元:Q4. 公正証書遺言は、どのくらいの期間、保存されるのですか? | 日本公証人連合会

2-2.自筆証書を遺言者の死亡後50年間預かる

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合、遺言書の原本は遺言者の死亡後50年間保管されます。50年という期間は、相続手続きが完了するまでに十分な余裕をもった設定です。

遺言者の死亡日が不明な場合は、出生日から起算して120年が経過した時点を基準として保存期間が計算されます。

2-3.画像データをデジタルは150年間残る

法務局の保管制度では、自筆証書遺言書の画像データが遺言者の死亡後150年間保存されます。原本の保存期間が50年であるのに対し、デジタルデータはより長く記録に残る仕組みです。万が一原本が廃棄されたあとも、画像データを確認できる期間が設けられているため、遺言の内容を記録として残せます。

ただし画像データはあくまで記録用であり、相続手続きに原本と同じ効力を持つわけではない点に注意が必要です。

2-4.信託銀行や弁護士との個別契約で定める

信託銀行や弁護士に遺言書の保管を依頼する場合、保存期間は各機関との契約内容によって個別に定められます。一般的には遺言者の死亡後、相続手続きが完了するまでの期間が保管の目安となります。

契約書に保存期間や廃棄の条件が明記されているかを事前に確認し、不明な点は締結前に担当者に確認しておきましょう。

遺言書を預ける信託銀行や弁護士などを見極める際は、保管コストや手続きのサポート内容も含めて、総合的に判断して選ぶのがポイントです。

3.遺言書の保存期間を過ぎるとどうなる?

遺言書の保存期間が過ぎた場合の影響を、以下の5つのポイントに分けて解説していきます。

  • 原則として原本が廃棄される
  • デジタルデータのみが記録に残る
  • 遺言書の検索や照会ができなくなる
  • 相続人が存在を証明できなくなる
  • 通常の遺産分割の手順に移行する

ひとつずつ解説します。

3-1.原則として原本が廃棄される

遺言書の保存期間が終了すると、原則として原本は廃棄されます。

ただし、公正証書遺言の場合は実務上140〜170年と長い期間が設定されているため、通常の相続では問題になりにくいです。この140〜170年という幅は、上記で先述した3つの基準のうち、遺言書作成時に最も遺言書の保存期間が長くなるものが適用されるため、結果遺言作成時の年齢によって該当する基準が異なります。

一方、自宅や信託銀行などに保管している場合は、契約終了や管理の中断によって原本が失われるリスクがあります。

保存期間と廃棄のタイミングを、あらかじめ確認しておくのが大切です。

3-2.デジタルデータのみが記録に残る

法務局の保管制度では、原本の保存期間が終了したあとも画像データが150年間記録に残ります。ただし、このデジタルデータはあくまで保管記録としての役割であり、相続手続きに使用できる法的な効力はありません。

原本が廃棄されたあとにデータだけ残っても、実際の手続きには活用できない点をしっかり押さえておきましょう。

遺言を確実に実現するためには、保存期間内に相続手続きを完了させるのが重要です。

3-3.遺言書の検索や照会ができなくなる

保存期間が終了した遺言書は、遺言検索システムによる照会の対象から外れる場合があります。公証役場の遺言検索システムは、保管中の公正証書遺言を全国規模で検索できる便利な制度ですが、廃棄済みの遺言書は情報が確認できません。

保存期間内であっても、遺言書の存在を相続人に伝えていない場合は発見が遅れるリスクもあります。生前に保管場所や存在を信頼できる人に共有しておきましょう。

3-4.相続人が存在を証明できなくなる

保存期間が終了して原本が廃棄されると、相続人が遺言書の存在を第三者に証明する手段がなくなります。遺言書があれば遺産分割協議を経ずに手続きを進められますが、存在を証明できない状態では法定相続のルールにもとづいて対応しなければなりません。

遺言者の意思を確実に実現するためにも、相続が発生したら早めに遺言書の有無を確認し、保存期間内に手続きを進めましょう。

3-5.通常の遺産分割の手順に移行する

遺言書の原本が廃棄されて内容を証明できなくなった場合、相続人全員で遺産分割協議をおこなう通常の手順に移行します。遺言書があれば特定の財産を特定の人に渡せますが、遺言書がない状態では相続人全員の合意が必要となるため、手続きが長期化する場合も。

相続人の人数が多かったり、意見が対立したりする場合、協議がまとまらずに調停や審判に発展するリスクもあるため、遺言書は保存期間内に活用できるよう早めの対応が大切です。

4.遺言書の保存期間内でも内容が無効になるケース

遺言書は保存期間内であっても、特定の事情によって内容が無効になる場合があります。有効期限がないからといって、作成後に何も気にしなくてよいわけではありません。以下のケースに該当しないか、定期的に遺言書の内容を見直すのが重要です。

  • 作成時に遺言能力を欠く
  • あとから別の遺言書を作成する
  • 記載した財産を生前に処分する
  • 受遺者が遺言者より先に亡くなる
  • 公序良俗に反する内容を記す

ひとつずつ見ていきましょう。

4-1.作成時に遺言能力を欠く

遺言書は、作成時に遺言能力が備わっていなければ無効となります。遺言能力とは、遺言の内容や意味を正しく理解したうえで意思決定できる判断力のことです。

認知症が進行した状態や、意識が明瞭でない状況で作成された遺言書は、あとから能力を欠いていたと認定されると効力が失われます。

遺言書を作成する際は、心身ともに問題のない時期を選んで手続きをおこなうのが大切です。

関連記事:相続人の認知症はバレるか?バレるタイミングや隠すリスクとは?

4-2.あとから別の遺言書を作成する

同一の遺言者が複数の遺言書を作成した場合、原則として日付が新しいほうが優先されます。以前に作成した遺言書と内容が矛盾する部分は、あとから作成した遺言書の内容に置き換えられます。つまり、新しい遺言書の作成によって、古い遺言書の一部または全部が実質的に無効になる可能性があるのです。

遺言内容を変更したいときは、あとから作成した遺言書の日付と内容を明確に記載しましょう。

4-3.記載した財産を生前に処分する

遺言書に記載した財産を、遺言者が生前に売却・贈与などで処分した場合、その財産に関する遺言の内容は無効となります。たとえば「長男に自宅を相続させる」と遺言書に書いていても、遺言者が亡くなる前にその自宅を売却している場合、遺言の対象となる財産が存在しないため実現できません。

遺言書を作成したあとに財産内容が変わった場合は、遺言書の内容も合わせて見直すのが重要です。

4-4.受遺者が遺言者より先に亡くなる

受遺者(遺言によって財産を受け取る人)が、遺言者より先に亡くなった場合、その遺贈は原則として無効となります。受遺者がいなければ財産の受け取り先がなくなるため、遺言の内容を実現できません。この場合、対象の財産は遺産分割協議の対象になるのが一般的です。

受遺者の状況に変化があった際は、速やかに遺言書の内容を更新して、希望にもとづいた相続が実現されるよう備えておきましょう。

4-5.公序良俗に反する内容を記す

遺言書の内容が公序良俗(社会的なルールや倫理観)に反している場合、その部分は無効となります。公序良俗に反する内容とは、犯罪行為を促すような記述や、著しく不合理な条件を受遺者に課すものなどが該当します。

遺言の自由は法律で認められていますが、社会的な許容範囲を超えた内容は法的な効力を持ちません。

作成時には弁護士や司法書士などの専門家に内容を確認してもらうと、無効リスクを未然に防げます。

関連記事:遺言書で相続させないことは可能?相続人の相続権は奪えるか

5.まとめ

遺言書に法律上の有効期限はありませんが、保管機関ごとに保存期間が設けられており、期間が終了すると原本が廃棄されるリスクがあります。公正証書遺言は実務上140〜170年、法務局保管の自筆証書遺言は死亡後50年(画像データは150年)が目安で、信託銀行や専門家への委託の場合は契約内容によって異なります。

遺言書の存在と保管場所を信頼できる相続人や遺言執行者に伝えておき、保存期間内に確実に手続きが進む環境を整えておくのが大切です。

また、保存期間内であっても遺言能力を欠いていた、受遺者が先に亡くなった、記載した財産が処分されたなどの理由で遺言書の内容が無効になるケースがあります。こうしたリスクを防ぐためにも、遺言書は作成後に定期的に内容を見直し、状況の変化に応じて更新するのが望ましいです。

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監修者 池部 翔司法書士・行政書士

司法書士法人・行政書士鴨川事務所 代表

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京都司法書士会・京都府行政書士会所属

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