遺産分割協議書での預金の分け方別文例集 | 正しい書き方とルール
前妻の子に「相続させない」または「相続分を減らす」5つの法的対策
2025.10.31

「離婚して疎遠になっている前妻の子に、財産を渡したくない」「現在の家族だけに、全財産を確実に残したい」とお考えではありませんか?
法的には、前妻の子も実子である限り、後妻の子とまったく同じ相続権を持ちます。何も対策をしないと、疎遠な相続人が加わった遺産分割協議で、遺された家族が大変な思いをするかもしれません。ですが、生前に対策を講じることで、前妻の子の相続分を「させない」または「減らす」ことは可能です。
そこでこの記事では、司法書士が以下の内容を解説していきます。
- 前妻の子の相続分を減らすための5つの法的対策
- 対策をおこなう上で最大の注意点となる「遺留分」への備え
前妻の子に相続させない方法について知りたいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
1.なぜ前妻の子にも相続権があるのか?
民法の規定によって、被相続人の子は第一順位の相続人にあたると定められています。したがって、被相続人と前妻との間に生まれた子は、親同士が離婚しているかどうかに限らず相続権を有するのです。
ここでは、民法の規定と前妻の子の相続権との関係について詳しく見ていきましょう。
1-1.離婚や親権の有無に関わらず、実子は常に第一順位の法定相続人
離婚や親権の有無に限らず、被相続人の実子は常に第一順位となります。(民法900条)
民法で定められている相続分については、以下のとおりです。
| 相続人の構成 | 相続分 |
|---|---|
| 配偶者と子1人 | 配偶者:2分の1、子:2分の1 |
| 配偶者と子2人 | 配偶者:2分の1、子:4分の1ずつ |
| 配偶者と子3人 | 配偶者:2分の1、子:6分の1ずつ |
たとえ法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子(非嫡出子)だとしても、被相続人の子である以上、相続分は変わりません。法定相続分に基づいて分配するのであれば、実子全員に財産を渡す必要があります。
1-2.疎遠・音信不通でも相続権は自動的になくならない
前妻の子とは連絡を取っておらず、疎遠になっている方も少なからずいるでしょう。しかし音信不通でも、相続権は自動的に消滅しません。
相続権は相続放棄や相続欠格、廃除といった法的な手続きが発生した場合に初めて失われます。自分の中では関係を絶ったつもりでいると、相続人同士でトラブルになる可能性もあります。
1-3.相続が発生したら前妻の子にも連絡が必要
相続が発生したら、遺された相続人は前妻の子にも連絡をしなければなりません。仮に遺産分割協議をするのであれば、相続人全員で話し合う必要があるためです。相続人が一人でも欠けていたら、遺産分割協議がやり直しとなるので注意してください。
とはいえ、ほとんどの方は前妻の子と連絡を取り合う機会がないでしょう。そのため戸籍謄本から本籍地を調査しつつ、居場所が判明した際には手紙でやり取りするのをおすすめします。
どうしても居場所がわからないときは、不在者財産管理人の選任または失踪宣告も検討してください。
2.前妻の子に「相続させない」または「相続分を減らす」5つの法的対策

前妻の子に「相続させない」または「相続分を減らす」には、以下の対策があります。
- 遺言書を作成する
- 生前贈与で現在の家族に財産を移転する
- 前妻の子に相続放棄をしてもらう
- 遺贈や死因贈与をおこなう
- 「相続廃除」を家庭裁判所に申し立てる
それぞれの対策方法について詳しく見ていきましょう。
2-1.遺言書を作成する
前妻の子に相続させないために、まずは遺言書を作成しましょう。遺言には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言がありますが、ミスを防ぎやすいのは公正証書遺言です。
公正証書遺言は公証人によって作成され、公証役場にて保管されます。遺言が無効になるリスクを防げるので、どうしても自分の意思を反映させたい方におすすめです。
自筆証書遺言であっても、法務局で保管する制度が2020年から始まりました。法務局で預かってもらえば、家族が勝手に開封してしまうミスを防げるようになります。
関連記事:遺言書で相続させないことは可能?相続人の相続権は奪えるか
2-1-1.なぜ遺言書が必要なのか
遺言書は、被相続人の意思を反映させる唯一の方法です。
被相続人が意思表示をしなければ、相続財産の分配方法は相続人同士の話し合いで決まってしまいます。どうしても分配方法を被相続人が決めたいのであれば、きちんと遺言で意思を表明することが大切です。
しかし相続人には、遺留分侵害額請求権が与えられています。前妻の子に財産を一切渡さないと決めていても、相手は最低限の相続分を請求できる権利があるわけです。
遺留分について押さえておかないと、相続人同士でトラブルに発展する恐れがあります。
2-2.生前贈与で現在の家族に財産を移転する
自身が死亡する前に、生前贈与として現在の家族に財産を渡すといった方法も可能です。都合の良い時期に財産を譲渡でき、遺産分割の対象となる分を減らせます。
一方で財産を贈与した場合、贈与税がかかるため注意してください。贈与税は、一般的に年間110万円を超えると発生します。相続税と計算方法が異なるため、贈与を選んだために税額が増えるケースもあります。
また遺留分の算定に加算される生前贈与の期間は、相続人に対する贈与は原則10年分、相続人以外への贈与は原則1年分です。期間がある点に注意してください。
2-3.前妻の子に相続放棄をしてもらう
財産を一切渡したくないのであれば、前妻の子に相続放棄してもらうのが望ましいでしょう。相続放棄は、資産と負債をすべて引き継がない旨を示す意思表示です。一度受理されたら撤回することはできません。
とはいえ相続放棄は、あくまで本人の意思に基づいてなされなければなりません。当然ながら強要することはできませんし、本人が相続放棄を断る可能性もあるでしょう。
さらに相続放棄の申述期限は、被相続人の死亡を知ったときから3カ月以内です。当該期間を過ぎた場合は、そもそも申述さえできなくなります。必要書類を集めるだけでも時間がかかるため、入念に話し合うことをおすすめします。
2-4.遺贈や死因贈与をおこなう
遺贈や死因贈与も、前妻の子に相続させない方法の一つです。これらは名前が似ていますが、厳密には制度が異なります。
| 制度名 | 定義 |
|---|---|
| 遺贈 | 自分の死後、遺言に基づいて財産を一方的に渡す |
| 死因贈与 | 相手との契約に基づいて、自分の死後に財産を渡す |
双方の制度においても、相続人同士でトラブルになりうるのが遺留分です。現実的には、すべての財産を当該方法で譲り渡すのは難しいでしょう。
2-5.「相続廃除」を家庭裁判所に申し立てる
前妻の子に相続させたくないのであれば、相続廃除も検討してみましょう。相続人を廃除するには、家庭裁判所に申し立てなければなりません。
相続欠格とは異なり、条件に該当したとしても自動的に成立するわけではないため注意が必要です。ここでは条件を説明するとともに、認められるハードルが高い理由も解説します。
2-5-1.相続人廃除が認められる条件
相続廃除が認められる条件として、以下のケースが該当します。
- 被相続人に肉体的・精神的虐待をしていた
- 暴力までいかなくても、日常的に暴言を吐いていた
- 重大な犯罪や非行行為をしていた
- 配偶者(相続人)が不倫などを繰り返していた
- 被相続人の財産を勝手に使い込んでいた
- 自分の作った借金を被相続人に返済させていた
これまで生活してきたなかで、相続人の一人に苦しめられた場合は、廃除の申し立てを検討してみるとよいでしょう。
2-5-2.認められるハードルは非常に高い
相続廃除は、認められるハードルが高い点に注意しなければなりません。
令和6年の司法統計によれば、相続廃除が認容されたのは210件中49件のみです。つまり確率で表すと、約23%しか認められていない計算となります。
参考:司法統計年報
相続廃除は、相続人の権利を家庭裁判所が一方的に奪う手続きです。したがって簡単に認めるわけにはいかず、ハードルが高めに設定されています。
3.【注意点】前妻の子には遺留分が認められている
前妻の子に財産を相続させないための対策をおこなううえで、最も注意しなければならないのが「遺留分」という権利です。たとえ遺言書に「全財産を後妻とその後妻の子に相続させる」と明記したとしても、前妻の子には法律で守られた最低限の取り分を請求する権利が残ります。
前妻の子の遺留分について、詳しく見ていきましょう。
3-1.遺留分とは「最低限の取り分」のこと
遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人(前妻の子も含まれます)に対して、法律上最低限保障されている遺産の取り分のことです。この制度は、たとえば「全財産を愛人に譲る」といった極端な内容の遺言書があったとしても、残された家族が生活に困らないようにするためのセーフティーネットとして機能します。
遺留分は、故人の意思(遺言)よりも優先される非常に強力な権利であり、前妻の子も当然この権利を持っています。
3-2.前妻の子の遺留分は「法定相続分の半分」
前妻の子に認められる遺留分は、原則として法定相続分の「2分の1」です。
たとえば、相続人が後妻と前妻の子1人の場合、法定相続分はそれぞれ1/2ずつです。したがって、前妻の子の遺留分は、その半分の「1/4」となります。もし遺産総額が4,000万円であれば、1,000万円分の遺留分を請求する権利があるわけです。
この割合は法律で決まっており、故人の意思で変更はできません。
3-3.遺言書で「遺留分を渡さない」と書いても法的に無効
遺言書に「前妻の子には一切相続させない」あるいは「遺留分も渡さない」と書いたとしても、その記載によって遺留分を奪う法的な効力(強制力)は発生しません。
遺留分は法律で定められた相続人の強固な権利であり、故人の遺言によっても一方的に侵害はできないルールになっています。したがって、そのような遺言書が残されていても、前妻の子は自身の遺留分を主張できます。
遺言書は万能ではないと知っておく必要があります。
3-4.遺留分を請求されたら金銭で支払う義務が生じる
前妻の子から遺留分を請求された場合、遺産を多く受け取った相続人(たとえば後妻やその後妻の子)は、侵害した遺留分に相当する額を金銭で支払う義務が生じます。これを「遺留分侵害額請求」と呼びます。
かつては不動産などの現物で返す方法もありましたが、法改正により金銭での支払いが原則となりました。もし遺産が不動産しかない場合でも、相続した人がその不動産を売却するなどして、現金を用意しなくてはなりません。
4.遺留分の請求に備えるための生前対策
前妻の子に相続させないよう対策しても、遺留分侵害額請求権は簡単には奪えません。そこで遺留分の請求に備えるため、生前に対策すべきことがあります。
ここでは、どのような生前対策をしたほうがよいかを解説します。
4-1.現金を用意しておいたり生命保険金を活用したりする
遺留分の請求への対策としては、現金を用意するか、生命保険金を活用するといった方法が有効です。現金を用意しておけば、前妻の子に遺留分を払いやすくなります。相続人同士の揉めごとは防げるようになるでしょう。
一方で後妻とその子に財産を確実に渡したいときは、生命保険金に加入する方法もあります。生命保険金の受取人を後妻に設定すれば、その分は遺留分の請求の対象にはなりません。
ただし遺産総額と比較して、生命保険金があまりにも多すぎる場合は、例外的に対象となる点に注意してください。
4-2.前妻の子に「遺留分の放棄」をしてもらう
前妻の子に遺留分の放棄をさせることも、遺留分の請求への対策の一つです。こちらの方法を採るには、あらかじめ前妻の子と連絡を取り合い、家庭裁判所で手続きしてもらう必要があります。家庭裁判所から許可を下りないと、遺留分の放棄はできないためです。
また相手にとってもメリットがなければ、相談には応じてくれないでしょう。遺留分は渡せないものの、ほかの財産を贈与するなどと代替案を出したほうが賢明です。加えて前妻の子と話が進んでも、合理的な理由がないと判断されたら、家庭裁判所が許可を出さないことも考えられます。
5.前妻の子に相続させないときに注意すべきこと

前妻の子に相続をさせないときに注意すべきこととして、以下の7点を解説します。
- 前妻の子の遺留分を完全に排除することはできない
- 公正証書遺言で作成するのが望ましい
- 遺言内容が不明確だと無効になる可能性がある
- 前妻の子も遺産分割協議に必ず参加する必要がある
- 生前贈与の額が一定の基準を超えると贈与税の課税対象になる
- 生前贈与が相続時に「特別受益」として扱われる場合がある
- 不動産を贈与する際は登記費用や不動産取得税などの負担が発生する
これらの注意点を必ず押さえておきましょう。
5-1.前妻の子の遺留分を完全に排除することはできない
前妻の子の遺留分(いりゅうぶん)は、どのような対策をもってしても法的に完全に排除(ゼロに)するのは不可能です。
遺留分とは、法律で相続人に保障された最低限の遺産の取り分です。たとえ遺言書に「前妻の子には一切財産を渡さない」と明記したとしても、前妻の子には侵害された遺留分に相当する金額を金銭で請求する権利(遺留分侵害額請求権)が残ります。
この権利は非常に強力であり、遺言や生前贈与によっても消滅させることはできないと理解しておきましょう。
5-2.公正証書遺言で作成するのが望ましい
前妻の子に相続させない意思を遺言書で残す場合、自筆証書遺言ではなく「公正証書遺言」で作成することが強く推奨されます。
自筆証書遺言の場合、日付の記載漏れや押印忘れといったわずかな形式不備で無効になるリスクが高いからです。その点、公正証書遺言は法律の専門家である公証人が作成に関与するため、形式不備で無効になる心配がほぼありません。
また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの恐れがなく、ご自身の意思を最も確実に実現できる方法といえます。
5-3.遺言内容が不明確だと無効になる可能性がある
遺言書の内容が不明確だと、その部分が無効として扱われてしまう可能性があります。
たとえば、「家は後妻に相続させる」と書いただけでは、どの不動産を指すのか特定できません。「財産はすべて長男に任せる」といった曖昧な表現も、法的な効力が認められない恐れがあります。
とくに不動産を相続させる場合は、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている通りに、土地の所在、地番、地目、面積などを正確に記載し、誰が見てもどの財産か特定できるように明記する必要があります。
5-4.前妻の子も遺産分割協議に必ず参加する必要がある
もし遺言書を作成せずに相続が発生した場合、前妻の子も法律上の相続人として遺産分割協議に必ず参加する必要があります。
前妻の子と疎遠である、あるいは連絡先がわからないからといって、その人を除外しておこなった遺産分割協議(話し合い)は法的に無効となります。その場合、銀行での預金解約や不動産の名義変更などの相続手続きが一切進められません。
遺言書がない限り、戸籍調査などで前妻の子を探し出し、話し合いに参加してもらうのが必須です。
関連記事:遺産分割協議しないとどうなる?リスクおよび手続きの進め方
5-5.生前贈与の額が一定の基準を超えると贈与税の課税対象になる
生前贈与の額が一定の基準を超えると、高額な贈与税の課税対象となる点に注意が必要です。前妻の子に相続させない対策として、後妻やその後妻の子に生前から財産を渡しておく方法があります。
しかし、暦年贈与(れきねんぞうよ)には年間110万円の基礎控除額しかありません。この金額を超えて贈与をおこなうと、贈与を受けた側に贈与税が課税されます。
相続税よりも税率が高くなるケースも多いため、税金面を考慮せずに贈与を進めると、かえって負担が重くなる可能性があります。
5-6.生前贈与が相続時に「特別受益」として扱われる場合がある
生前贈与は、相続が発生した際に特別受益として扱われ、遺留分の計算に影響する場合があります。特別受益とは、遺産の前渡しとみなされる特別な援助のことです。
相続開始前10年以内におこなわれた相続人への生前贈与は、遺留分を計算する際の基礎財産に加算されます(持ち戻し)。相続人以外への贈与は原則1年分のみ加算されます。
その結果、前妻の子が請求できる遺留分の金額が増えてしまい、せっかくおこなった生前贈与対策の効果が薄れてしまう可能性があるのです。
5-7.不動産を贈与する際は登記費用や不動産取得税などの負担が発生する
不動産を生前贈与する際は、相続時に比べて高額な登記費用(登録免許税)や不動産取得税がかかるという負担が発生します。
相続で不動産の名義変更をする場合の登録免許税の税率は0.4%ですが、生前贈与の場合は2%と5倍になります。さらに、不動産を受け取った側には不動産取得税(固定資産税評価額の3%または4%)も課税されます。
現金がないため不動産で生前贈与をおこなう場合でも、これらの諸費用を誰が負担するのかを考えておかないと、かえって大きな出費となります。
6.まとめ
前妻の子に相続させたくないとき、遺言や生前贈与によってある程度は分配方法を自由に決められます。しかし相続人には遺留分侵害額請求権があるため、財産を一切渡さないとするのは困難です。
遺留分の請求を防ぐうえでは、生命保険金や遺留分の放棄も方法の一つとなります。ただし中途半端に解決してしまうと、最終的に揉めるのは遺された家族です。
こういったトラブルに家族が巻き込まれないようにするには、相手と入念に話し合わなければなりません。相続手続きについて何かアドバイスが欲しい場合は、相続問題に強い司法書士を頼ってみることもおすすめです。
司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。











