遺産分割協議書での預金の分け方別文例集 | 正しい書き方とルール
遺言書で相続させないことは可能?相続人の相続権は奪えるか
2025.07.29

遺言書を作成するうえで、特定の人に相続させない旨を主張したいと考えていませんか。相続人の一人と折り合いが悪く、財産を一つも渡したくないと思っている人も少なからずいらっしゃるでしょう。
この記事では、「相続させない」旨の遺言書を作れるかどうかについて解説します。相続のルールに加え、具体的な対処法も解説するので、今後の参考にしてください。
1.「相続させない」旨の遺言書は作れる

結論として、遺言書で「特定の相続人には、遺産を一切相続させない」と定めることは、法律上有効に作成できます。これは、ご自身の財産を、亡くなった後に誰にどのように遺すかを自由に決められる「遺言の自由」という権利が、法律で保障されているからです。
とはいえ、犯罪に関する行為や遺言能力のない人の遺言は、原則として効力を発揮しません。ほかの相続人による詐欺や強迫に基づき、遺言書を作成する行為もNGです。
こういった事情がなければ、特定の人に相続させないといった記載も認められます。
1-1.民法には「私的自治の原則」という原則がある
遺言書で財産の分け方を自由に決められるのは、日本の民法が、個人間の法律関係は、国家が干渉せず、個人の自由な意思に委ねるという「私的自治の原則」を基本としているからです。
私的自治の原則があるため、自分の財産を誰に、いくら、どのような形で遺すかを、遺言によって自由に決定する権利が認められています。そして、たとえ遺言書の内容が法律で定められた相続分と異なる内容であっても、遺言者の意思が優先されるのです。
このように、個人の意思を最大限尊重するという考え方が、自由な内容の遺言書を有効とする法的な背景です。
2.遺言書では簡単に相続権を奪えない
基本的に自由な記載が認められる遺言ですが、現実的には相続人の相続権を簡単に奪えるわけではありません。相続人には相続権が定められているほか、遺留分の請求も可能であるためです。
実際に相続させない旨の遺言書を作成しても、その思いが届く可能性は高くないといえます。相続権を簡単に奪えない理由について詳しく説明します。
2-1.相続権が民法に規定されている
相続人から相続権を簡単に奪えない理由として挙げられるのが、相続権が「民法上で保障されている権利」であるためです。
民法では、配偶者が必ず相続権を持つように規定しています。ほかの親族は、原則として以下の相続順位に従って相続権が与えられます。
- 子(第一順位)
- 直系尊属(第二順位)
- 兄弟姉妹(第三順位)
そもそも相続は、家族の生活を守ったり、富の再分配を図ったりすることを目的としています。遺言者の意思も尊重しなければなりませんが、制度全体の目的を考えると、遺言で相続権を完全に奪うのは難しいでしょう。
2-2.相続人は原則遺留分を請求できる
相続権を簡単に奪えない理由として、相続人による「遺留分侵害額請求」が認められる点も挙げられます。遺留分とは、配偶者や子、直系尊属に保障されている財産の最低取得分です。
配偶者と子は、「法定相続分×2分の1」を遺留分として請求できます。一方で直系尊属の場合は「法定相続分×3分の1」です。
このように配偶者と子、直系尊属の相続権を奪おうと思っても、基本的には最低限の財産を取得するでしょう。
しかし兄弟姉妹には、遺留分が認められません。兄弟姉妹の相続人であれば、相続させない旨の遺言書も効果を発揮する可能性があります。
2-3.相続放棄は本人の意思に基づく
相続放棄とは、故人の財産を一切引き継がない旨を家庭裁判所に申述することです。効力が生じるのは、原則として本人の意思に基づいて手続きしたときです。
ほかにも財産を引き継がせない方法として、相続分の放棄も挙げられます。こちらは家庭裁判所は関与しませんが、同じく本人の意思が重視されます。あらかじめ相続分の放棄を頼んだとしても、本人が認めなければ遺留分を取得するでしょう。
3.遺言以外で相続人に相続させないときの対処法

遺言で特定の相続人の相続権を奪うのは難しいですが、少しでも相続分を減らしたいと考えている人もいるでしょう。遺言以外で特定の相続人の相続分を少なくする方法は、以下の通りです。
- 生前贈与を検討する
- 死因贈与・遺贈を検討する
- 相続欠格事由に該当していないか確認する
- 相続権の廃除を申立てをする
遺言以外にも、ここで紹介する方法も検討してみてください。
3-1.生前贈与を検討する
まず方法の一つとして挙げられるのは、ほかの相続人や第三者への生前贈与を検討することです。たとえば5,000万円の財産を持っている場合、半分を配偶者に渡してしまえば残りの2,500万円で相続が発生します。
しかし、生前に財産を受け取った側は特別受益が発生するため、「持戻し計算」をしなければなりません。持戻し計算とは、ほかの相続人に取得した利益を返還する制度です。ただし持戻し計算については、遺言で免除することも認められます。
また生前贈与してから10年以内は、贈与された財産も遺留分侵害請求権の対象となります。生前贈与で対策を講じるには、長い期間をかけて少しずつ贈与するといった対策が必要です。
3-2.死因贈与・遺贈を検討する
死因贈与や遺贈も、特定の相続人の相続分を減らす方法の一つです。どちらも被相続人の死後に効果が発生しますが、死因贈与は双方の契約に基づき、遺贈は単独行為であるといった違いがあります。
とはいえこれらの方法も、遺留分侵害請求権を避けられるわけではありません。つまり親族の相続権を完全には奪えないことも押さえてください。
3-3.相続欠格事由に該当していないか確認する
遺産を相続させたくないのであれば、相続欠格事由に該当していないかも確認しましょう。相続欠格事由とは、次に挙げられる重大な非行行為をした人から相続権を奪う措置のことです。
- 故意に被相続人・相続人を死亡させて刑罰を受けた(未遂も含む)
- 被相続人が殺害されたのに告発しなかった(殺害者が配偶者や直系血族のときを除く)
- 詐欺や強迫によって遺言を妨げた(もしくは取り消しや変更を妨げた)
- 詐欺や強迫によって遺言をさせた(もしくは取り消しや変更をさせた)
- 遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿をした
相続欠格事由に該当する人は、法律上当然に相続権を失うとされています。相続させたくない場合は、上記の要件に該当していないかをチェックしてください。
3-4.相続権の廃除を申立てをする
相続欠格事由に該当していなくても、虐待や重大な非行行為が見られたら廃除の申立てができます。廃除は法律上当然に相続権を奪うものではなく、家庭裁判所への申述が必要です。審判が確定したら、対象者は相続権を失います。
廃除は自分で申し立てるだけではなく、遺言ですることも可能です。被相続人の死後に手続きするので、遺言執行者を指定したほうが望ましいでしょう。遺言執行者が申述して家庭裁判所の審判が下りたら、被相続人の死亡時にさかのぼって相続権が失われます。
4.一切相続しない旨の遺言を残すリスク
遺言は遺言者の意思が尊重されるため、一切相続しない旨を主張することも認められます。しかしこのような遺言を残してしまうと、死後に相続人同士でトラブルが発生しかねません。ここでは相続させない旨の遺言を残すリスクを解説します。
4-1.廃除の意思があるかが不明確である
そもそも「相続させない」といった遺言は、廃除の意思があるかどうかが不明確です。具体的な記載がなければ、相続人たちの混乱を招いてしまうでしょう。
仮に廃除の申立てをしても、要件に該当していなければ認められる可能性は低いといえます。「相続させない」とだけ残すのではなく、理由を明確に書きましょう。
4-2.家族間での争いが起こりうる
特定の相続人にのみ相続させない旨の遺言を残すと、家族間で争いが生じる恐れもあります。
仮に配偶者と長男・次男が法定相続人であるとき、長男にだけ相続財産を渡さないとしましょう。遺言を目にした長男は、ほかの相続人に対して遺留分を争う可能性が高まります。
場合によっては、裁判沙汰になることも押さえないといけません。
関連記事:【相続で揉める家族の特徴13選】揉める原因や対策も解説
4-3.代襲相続人との争いにつながる
廃除の要件に該当しており、相続権を失わせることに成功しても、代襲相続人との争いにつながる可能性もあります。代襲相続とは相続人が権利を失い、その子が相続権を引き継ぐ制度を指します。
主に相続人の死亡により発生しますが、廃除も代襲相続が発生する要素の一つです。たとえば長男の相続権を廃除で奪っても、長男に子(被相続人の孫)がいたら相続分を請求できます。
5.遺言の悩みを司法書士に相談しよう

遺言について悩みを抱えているのであれば、最寄りの司法書士に相談するのをおすすめします。ここでは、司法書士に依頼するメリットを紹介します。
5-1.書類作成を代行できる
司法書士に依頼するメリットは、書類作成を代行できる点です。自筆証書遺言書は本人が書かなければなりませんが、あらかじめ司法書士が原案を作成することは認められています。
また公正証書遺言書の場合、公証人に作成してもらうべく書類を準備しないといけません。司法書士は原案作成に加え、書類の収集も併せて代行できます。
ほかにも証人となることで、立会人として公正証書遺言書の作成をサポートします。一連の手続きに関与できるため、スムーズに遺言書作成を進められるでしょう。
5-2.相続や登記の知識が豊富である
相続や登記の知識が豊富である点も、司法書士の強みの一つです。相続はさまざまな問題が発生しやすく、トラブルになっている家庭も少なくありません。原則として直接的にトラブルを解決できるわけではないものの、有益なヒントを示してくれます。
加えて司法書士は、登記のプロです。相続財産に不動産がある場合、相続人による登記が必要となります。相続開始後の取引をスムーズに進めるためにも、生前に司法書士を相続人に紹介しておくとよいでしょう。
5-3.140万円以下の少額訴訟を代理できる
相続トラブルで裁判に発展しても、紛争処理をするのは基本的に弁護士です。ほかの人が訴訟の代理人になると、非弁行為として罰則が科せられます。一方で司法書士でも、140万円以下の少額訴訟であれば訴訟の代理が可能です。
あらかじめ司法書士に相談しておけば、相続人間で裁判沙汰になったときも対応してくれます。自分が死亡したあとも、相続人間の紛争を早期解決するうえで役立つでしょう。
6.まとめ
遺言書に「相続させない」と残したとしても、認められる確率は低いといえます。基本的に相続人には、遺留分侵害請求権が認められます。
そのため相続させたくない人に対しても、最低限の財産は渡さないといけません。遺留分侵害請求権を失わせたいのであれば、相続欠格事由や廃除の要件に該当していないかを確認しましょう。
ただし特定の人に相続させない旨の遺言は、トラブルの原因にもなりかねません。遺言書作成に着手する前に、相続手続きのプロである司法書士に相談してみてください。
司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。











