遺産相続

遺産相続が発生しても何も言ってこない!家族から連絡がない場合の対処法

2025.07.18

遺産相続が発生しているにもかかわらず、家族が何も言ってこないケースもあります。この状態でも相続権を失う恐れはないものの、実生活でトラブルも起こりかねないので、早めに対策を講じることが大切です。

この記事では、家族から遺産相続の発生に関する連絡がない場合の対処法を解説します。特に家族と疎遠になっている人は、ぜひ記事を参考にしてください。

1.遺産相続で何も言ってこない場合も問題はない

遺産相続が発生したとき、家族が何も言ってこない場合でも特に問題はありません。その理由について詳しく解説します。

1-1.相続権は自ら放棄しない限り失わない

遺産相続が発生するタイミングで、相続権も自動的に発生します。民法882条では「相続は、死亡によって開始する」と規定されているためです。そして相続件は、自ら相続放棄をしない限り他者から一方的に奪われることはありません。

また相続の権利には、時効が設定されていないところもポイントの一つです。気づくのが遅れたとしても、遺産分割協議はいつでも請求できます。ただし後ほど詳しく説明しますが、遺留分侵害額請求権には最大10年の時効があるので注意が必要です。

1-2.遺産分割協議は相続人全員の同意が必要である

家族が何も伝えてこない場合、遺産分割協議を勝手に終わらせているケースも考えられます。しかし遺産分割協議は、相続人全員の同意が必要です。

相続人の誰かが欠けている状態では、取り決めた内容も無効となります。つまり理不尽に除外された相続人側からも、再度遺産分割協議を要求できます。

1-3.遺言執行者には相続人全員への通知義務がある

被相続人が遺言を残していた場合、相続人の誰かが知らないまま手続きを完了できません。一般的に遺言は、遺言者や家庭裁判所により遺言執行者(遺言の内容を実現する人)が指定されるためです。

遺言執行者に選ばれた人は、相続人全員に対して通知しなければなりません。通知には、遺言の記載や財産目録も示す必要があります。仮に遺言で財産をもらえない相続人も、遺留分侵害額請求権を行使できるようになっています。

2.遺産相続では公的機関も何も言ってこない

遺産相続の発生を知らなくとも相続権に支障はありませんが、いつまでも行使できないのは不安に感じるでしょう。しかし家庭裁判所や市区町村役場は、相続人に対して相続の発生を伝えることはありません。

もちろん事故や事件に巻き込まれて亡くなったり、入院したりした場合は警察や病院から連絡が来るケースもあるでしょう。この場合においても調査や報告が主な目的であり、相続に関する話は特にされません。

相続手続きは自分で状況を調べる必要があるため、家族と疎遠になっている人は特に注意しましょう。

3.遺産相続のことを何も言ってこない理由とは

遺産相続について何も言ってこない場合、何かしらの事情があると考えたほうが賢明です。よくあるのが、以下のようなケースです。

  • 遺言書で財産の分配先から除外されていた
  • 遺産分割により損する人がいる
  • 生前贈与により分配できる遺産がない
  • 遺産を隠そうと企んでいる

それぞれ解説していきます。

3-1.遺言書で財産の分配先から除外されていた

まず考えられるのが、遺言書で財産の分配先から除外されていたケースです。遺言どおりに財産を分配すれば、わざわざ遺産分割協議をおこなう必要もありません。

スムーズに遺産分割が完了したため、除外されている相続人に対して連絡していないことが考えられます。ただし、相続人には「遺留分侵害請求権」という最低限保証された相続分を請求する権利があります。

財産を引き継ぎたいと考えるのであれば、遺留分侵害請求権の行使を検討してください。

3-2.遺産分割により損する人がいる

連絡しない理由として、遺産分割により損するケースも挙げられます。

たとえば被相続人が家を所有しており、相続人の一人が暮らしていたとしましょう。しかし遺言で指示がなければ、不動産も遺産分割協議によりさまざまな形で分配できます。仮に遺産分割を経たことで、別の相続人が不動産を相続するとなった場合、元々暮らしていた人が追い出される可能性もあるでしょう。

こうしたリスクを防ぐため、何も連絡をしないといった手段を採っているケースがあります。

3-3.生前贈与により分配できる遺産がない

被相続人が、生前贈与で財産のほとんどを渡していることも考えられます。このケースで家族から連絡が来ないのは、分配できる遺産が残っていないためです。

生前贈与についても、以下の条件に該当すれば相続人は遺留分侵害額請求が認められます。

受贈者条件
相続人以外相続開始から1年以内
法定相続人相続開始から10年以内

ほかにも贈与者と受贈者の双方が、遺留分を害することを知っていたときは、同じく遺留分侵害額請求が可能です。

3-4.遺産を隠そうと企んでいる

家族の遺産隠しにより、連絡を一切しない場合もあるので注意が必要です。被相続人の口座を管理していた者が、勝手に預貯金を使い込む例が該当します。

一般的に財産の使い込みは窃盗罪や横領罪の対象になりますが、刑法では親族間での同行為を免除するのが原則です(刑法244条1項)。そのため民事的な手段として、不当利得返還請求などで争う必要があります。

4.遺産相続の発生を調べる方法

もし親が亡くなったという噂を聞いたら、自ら遺産相続について調べるとよいでしょう。主な調査方法を簡潔にまとめます。

4-1.相続人の調査をする

相続の発生を調べる方法として、戸籍謄本の収集が挙げられます。被相続人の直系卑属であれば、委任状なしに戸籍謄本の取得が可能です。どうしても時間が取れないときは、司法書士に依頼する選択肢もあります。

戸籍謄本を取得したら、死亡日に関する記載がないかをチェックしましょう。加えて相続人の状況(隠し子などはいないか)も確認し、誰に遺産分割協議をすればよいかを整理してください。

4-2.相続放棄の照会をかける

自身が第二順位、第三順位にあたる場合、先順位の相続人が相続放棄をしたら相続権を取得できます。しかし相続放棄をしたにもかかわらず、後順位の相続人に連絡しない人も一定数いるでしょう(連絡は義務ではないため)。

このケースにおいては、家庭裁判所で手続きすれば先順位の相続人が、相続放棄をしたかどうかがわかります。照会時には「照会申請書」に加え、その他添付書類も必要です。司法書士や家庭裁判所に確認しつつ、準備を進めるのをおすすめします。

関連記事:相続放棄は親戚に迷惑がかかる?迷惑をかけずに相続放棄する方法を解説

5.勝手に遺産相続が進んでいたときの対処法

遺産を相続したいのであれば、自らが相続人に対してアクションを起こさないといけません。調査の結果、勝手に遺産相続が進んでいることがわかった場合は、以下3つの対処法の実践を検討してください。

  • 司法書士に相談する
  • 再度遺産分割協議をする
  • 調停や訴訟も視野に入れる

一つずつ解説します。

5-1.司法書士に相談する

遺産相続は複雑になるケースも多く、一人で悩んでしまう人も一定数います。しかし自分一人で解決しようと思っても、専門的なアドバイスがないと上手く事を進めるのは難しいでしょう。

遺産相続を実現させたいのであれば、最寄りの司法書士に相談するのをおすすめします。弁護士のように訴訟で争うことはできませんが、書類作成や登記申請、調査をサポートしてもらえます。

5-2.再度遺産分割協議をする

自分を除いた相続人で遺産分割協議をしたところで、全員が参加していない時点で効力は発揮しません。財産を引き継ぐためには、改めて協議するように要求しましょう。

遺産分割協議書は、司法書士に作成を依頼したほうが賢明です。ただし弁護士とは異なり、遺産分割協議に関する代理交渉はできないため注意してください。

5-3.調停や訴訟も視野に入れる

遺産分割協議をしてくれない場合、最終手段として調停や訴訟も視野に入れる必要があります。司法書士は、これらの手続きに関する書類の作成が可能です。

140万円以下の金品を争う簡易訴訟であれば、司法書士による訴訟手続きの代理も認められています。特に遺留分侵害額請求を検討している人は、一度司法書士に相談してみましょう。

6.相続人全員が遺産相続の手続きをしないリスク

遺産相続について何も言ってこなかっただけでなく、一部の相続人が相続の発生を知っているにもかかわらず放置していることもあります。相続人全員が遺産相続を進めないことには以下のようなリスクが

あり、注意が必要です。

  • 相続税を延滞してしまう
  • 相続放棄ができなくなる
  • 【不動産がある場合】未登記により過料を課せられる

経済的に負担がかかる恐れもあるので、できる限り早く対処しなければなりません。詳しく解説していきます。

6-1.相続税を延滞してしまう

まず押さえないといけないのが、相続税を延滞するリスクがあることです。相続税は「3,600万円+(600万円×法定相続人の数)」を超える分に課せられます。

非課税になるケースも少なからずありますが、実際に調査してみないと対象になるかわかりません。相続税は被相続人の死亡を認知した日の翌日から10カ月以内に納めないといけないため、なるべく早く調査を済ませる必要があります。

6-2.相続放棄ができなくなる

相続手続きを放置していると、相続放棄ができなくなります。相続放棄の期限は、相続の発生を知ったときから3カ月以内です。期限内に放棄の申述をしなかったら、被相続人の資産だけではなく負債も引き継がないといけません。

つまり被相続人が多額の借金を抱えている場合、ほかの相続人とともに弁済する義務を負います。このようなリスクを防ぐためにも、迅速に調査を進めましょう。

6-3.【不動産がある場合】未登記により過料を課せられる

被相続人が不動産を所有しているときは、相続登記が必要です。2024年4月から相続登記は義務となり、3年以内に名義を変更しない人には10万円以下の過料を科されるように改正されました。

また、空き家の管理が不十分である場合、一般的に特定空き家とみなされる恐れもあります。特例空き家に指定されてしまうと、固定資産税の計算時に特例率(6分の1)が適用されません。通常より約6倍の固定資産税を納めないといけなくなるため、徹底した管理が求められます。

以上のようなリスクを負わないためにも、相続の発生を知ったタイミングから迅速な行動をしなければなりません。

関連記事:相続登記の義務化による罰則・過料とは?罰則を受けないための方法も解説

7.まとめ

家族と疎遠になっている場合、遺産相続が発生しても何も伝えてくれない可能性があります。事実を知らされなかったからといって、相続権を失うわけではありません。ただし手続きをしなければ、いつまでも相続できない状態が続きます。

税金および登記の問題に関わる恐れもあるため、まずは司法書士に相談しつつ、相続の状況を調査しましょう。権利を行使するには、専門的なアドバイスを受けながら入念に準備することが大切です。

司法書士法人・行政書士鴨川事務所では、相続に関するお問い合わせを随時受け付けております。相続で不安に感じていることや悩みなど、1人で抱えこまずにぜひ私たちへご相談ください。

監修者 池部 翔司法書士・行政書士

司法書士法人・行政書士鴨川事務所 代表

相続手続きは複雑で、自己判断により重大なトラブルを招くことがあります。当事務所では、丁寧に相談を受けたうえで、専門知識を活かし、最適な解決策の提案から実行までをサポートしています。

京都司法書士会・京都府行政書士会所属

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