遺産相続

遺産分割協議書に金額は書かなくてもOK!書かない場合の記載ルールも解説

2026.02.02

遺産分割協議書を作成する際、預金額〇〇円とはっきり金額を書くことに抵抗を感じていませんか?

「金額を明記すると、親族の間で不公平感が出たり、感情的なしこりが残ったりするのではないか」

「残高が少しでも違っていたら、銀行や法務局で書き直しを命じられるのではないか」

そんな不安から、筆が止まってしまう方もいるのではないでしょうか。

遺産分割協議書には金額を書く必要はなく、どの財産を誰が取得するかだけを明確にする書きかたのほうが、実務上はトラブルを避けやすくなります。そこでこの記事では、なぜ金額を書かなくても法的に有効なのかその理由を解説します。

遺産分割協議書に金額を書かないメリットやデメリットもご紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。

1.遺産分割協議書に金額は書かないのはありなのか

結論、遺産分割協議書に金額を書かなくても問題ありません。遺産分割協議書に、あえて預貯金の具体的な金額を書かない作成方法は、実務でもよく用いられており、それ自体で無効になるものではないのです。

預貯金は、相続発生後から解約・払戻しまでの間に利息が付いたり、解約時の端数処理などで金額が変動することがあります。もし協議書に「〇〇円」と金額を固定して記載すると、作成時点と手続時点で残高が一致しない場合に、金融機関から確認や補正を求められることがあります。

そのため、実務では、口座を特定できる情報(金融機関名・支店名・種別・口座番号など)を明記したうえで、「当該預貯金の全額」などの包括的な表現で取得者を定める書き方が採られることが多いです。

1-1.遺産分割協議書の目的

遺産分割協議書を作成する目的は、相続人全員が誰がどの財産を引き継ぐかに合意した事実を証明し、銀行や法務局で名義変更の手続きをスムーズに進めることです。

第三者である金融機関や役所の担当者が見て、対象となる財産が特定でき、かつ相続人の意思が確認できれば書類としての役割は十分に果たせます。つまり、財産を特定するための口座番号や家屋番号などの情報さえ正確であれば、具体的な評価額や残高まで記載する必要はありません。

関連記事:遺産分割協議書は必要か?必須となる手続きや不要なケースを解説

1-2.遺産分割協議書に金額を書くのは必須ではない

前述したように、法律上、遺産分割協議書に預貯金の具体的な金額を必ず記載しなければならないという決まりはありません。預貯金の分配を協議書に記載する際は、金額ではなく、対象となる口座が特定できるように「金融機関名・支店名・口座種別・口座番号・口座名義人」などを記載し、取得者を明確にする方法が一般的です。

金額を書かないと不安に感じる方もいますが、財産が特定でき、相続人全員の合意が確認できる内容であれば、協議書としての機能は十分に果たせます。金額を固定せず「当該口座の預貯金全額(解約時点の残高)」などの表現にしておくことで、利息等による増減があっても対応しやすくなります。

1-3.遺産分割協議書に金額を書かないといけないケース

基本的には金額不要で作成できますが、金銭のやり取りを約束する場合や、特定のために金額が必要な一部のケースでは正確な数字の記載が求められます。たとえば、特定の相続人が金銭を支払う条件がついている場合、その金額が書かれていないと約束の内容が証明できず、あとから言った言わないの争いになりかねません。

どのような状況で金額の記載が必須となるのか、具体的な2つのパターンを以下で詳しく確認していきましょう。

  • 代償分割をする場合
  • 口座に入っていない自宅保管の手持ち現金がある場合

ひとつずつご紹介します。

1-3-1.代償分割をする場合

不動産といった分けにくい財産を特定の人がもらい、代わりにほかの相続人へ現金を渡す代償分割をおこなう際は、支払う金額を協議書へ明確に記載しなければなりません。長男は次男に対して代償金として◯◯万円を支払うと明確に記載しておかないと、単なる金銭の贈与とみなされて贈与税がかかったり、支払いが履行されなかったりするリスクがあります。

代償分割する場合は財産の特定ではなく、債務(支払い義務)の内容を確定させるために、具体的な金額の明記が必要です。

1-3-2.口座に入っていない自宅保管の手持ち現金がある場合

亡くなった方が自宅の金庫やタンスなどで保管していた手持ちの現金を分割する場合は、預貯金のように口座番号で特定できないため、金額を書いて財産を特定する必要があります。保管中の現金すべてと書く方法もありますが、あとから別の場所で現金が見つかったときに区別がつかなくなるため、現金◯◯万円と記載するのが確実です。

存在がはっきりしている現金を分けるときは、トラブルを防ぐためにも実際に確認した金額を正確に記すようにしましょう。

2.遺産分割協議書に金額を書かないメリット

遺産分割協議書に金額を書かないメリットは、手続きの途中で預金残高が変わっても、書類を作り直さずにそのまま使い続けられる点です。

以下では遺産分割協議書に金額を書かないメリットを具体的に解説します。

  • 解約手続きまでに生じる利息や手数料の変動に対応できる
  • 記載ミスによる書き直しや再実印の手間がなくなる
  • 有料の残高証明書を待たずに通帳の情報だけで作成できる

ひとつずつ見ていきましょう。

2-1.解約手続きまでに生じる利息や手数料の変動に対応できる

金額を書かずに「当該口座の預貯金全額」といった形で取得者を定めておくと、相続開始後に発生する利息や、解約時の端数処理などによる残高の増減があっても、協議書の内容と矛盾しにくくなります。

一方、協議書に「100万円」と金額を固定して記載すると、手続時点の残高が100万円と一致しない場合に、金融機関から追加の確認や補正を求められることがあるため、結果として手続きが長引く原因になることがあります。口座を特定したうえで包括的に取得者を定める書き方は、こうした差し戻しリスクを下げ、手続きをスムーズに進めるうえで有効な選択肢です。

2-2.記載ミスによる書き直しや再実印の手間がなくなる

遺産分割協議書に具体的な金額を書かないと、単純な書き間違いや計算ミスがなくなり、相続人全員に実印を押し直してもらう負担を回避できます。万が一、記載した金額が間違っていると、訂正印をもらうために遠方に住む親族のもとへ再度書類を郵送しなければなりません。

口座番号といった特定に必要な情報さえ正しければ手続きは進められるため、記入ミスのリスクが高い数字の記入を避けるのが効率的な作成方法です。

2-3.有料の残高証明書を待たずに通帳の情報だけで作成できる

金額の記載を不要にすると、銀行から有料の残高証明書を取り寄せる時間を待つ必要がなく、手元にある通帳の情報だけですぐに協議書の作成に取りかかれます。正確な残高を知るための証明書発行には数千円の手数料と数週間の期間がかかりますが、金額を書かない場合はその工程を省略しても問題ありません。

葬儀後の忙しい時期に少しでも手間を減らし、スピーディーに遺産分割の話し合いを始められるのが、遺産分割協議書に金額を書かないメリットです。

3.遺産分割協議書に金額を書かない場合のデメリット・注意点

遺産分割協議書に金額を書かないと、手続きにおける再作成リスクは減りますが、相続人の間で不信感を生む場合があります。あとから「自分だけ損をしているのではないか」と疑われるのを防ぐには、事前に全員へ十分な説明をしておくのが大切です。

以下で、遺産分割協議書に金額を書かない場合のデメリット・注意点を解説します。

  • 相続人間で誰がいくら貰ったかが不透明になりやすい
  • あとから残高を知った相続人から不公平だと不満が出る
  • ほかの相続人に署名を拒否されるリスクがある
  • 別途財産目録の作成が必要になる

ひとつずつ見ていきましょう。

3-1.相続人間で誰がいくら貰ったかが不透明になりやすい

遺産分割協議書に金額が書かれていないと、パッと見ただけではそれぞれの取り分が公平なのかどうかが判断しづらくなります。たとえば「A銀行の預金は長男が相続する」とだけ書かれていても、そこに100万円あるのか1000万円あるのかは、通帳を見ている本人にしかわかりません。

ほかの家族からすれば、本当はもっと多いのではないかと疑念を抱くきっかけになり、信頼関係にヒビが入るリスクがあります。

3-2.あとから残高を知った相続人から不公平だと不満が出る

ハンコを押したあとで正確な金額を知ったほかの相続人が、「そんなに多いなら納得しなかった」と不満を漏らすトラブルが起こり得ます。遺産分割協議書は金額を書かなくても有効ですが、親族間で隠していたと誤解されると、将来の法事や付き合いにまで悪影響をおよぼすことも。

円満に解決するためには、協議書とは別に通帳のコピーを見せて、全員が金額を把握した状態で合意するのが大切です。

関連記事:相続で通帳を見せてくれないときの対処法|手順や必要書類を徹底解説

3-3.ほかの相続人に署名を拒否されるリスクがある

遺産分割協議書に金額が不明確なままだと警戒心を抱かれ、遺産分割協議書への署名や実印の押印を拒否される場合があります。とくに遠方に住んでいて普段の交流が少ない親族がいる場合、「騙されているのではないか」という不安を抱きやすいです。

スムーズにハンコをもらうためにも、財産の総額や内訳をしっかりと開示し、誠意を持って説明をおこなう姿勢を持ちましょう。

関連記事:相続で印鑑を押してくれないときのリスクや対処法

3-4.別途財産目録の作成が必要になる

遺産分割協議書に金額を書かない場合、相続人間で「本当に公平なのか」「隠していないか」という不安が生じやすくなるため、トラブル防止の観点から財産目録を別途作成して共有することが望ましい場合があります。ただし、財産目録の作成は、原則として法律上の必須要件ではありません。

財産目録を用意する場合は、預貯金なら金融機関名・支店名・種別・口座番号、不動産なら所在地・地番・家屋番号など、「財産を特定できる情報」を整理して記載します。金額まで必ず書く必要はありませんが、相続人の納得感を得る目的で、残高証明や評価証明などをもとに概算額を併記する運用もあります。

4.遺産分割協議書に金額を書かない場合の記載ルール

遺産分割協議書に金額を書かない場合は、どの財産を指しているのかが第三者にも明確にわかるよう、口座情報を正確に特定して記載するのが大切です。

ここでは遺産分割協議書に金額を書かない場合の記載ルールをご紹介します。

  • 銀行名・支店名・口座番号などの情報を記載する
  • 金額の代わりに全額や一切の権利という文言を使う
  • 解約までにつく既経過利息も記載する
  • 万が一の漏れに備えて包括条項を入れておく

ひとつずつ確認していきましょう。

4-1.銀行名・支店名・口座番号などの情報を記載する

遺産分割の対象となる預貯金を特定するために、以下4点は通帳の記載通りに正確に書き写さなければなりません。

  • 金融機関名
  • 支店名
  • 預金種別
  • 口座番号

「〇〇銀行の預金」といった曖昧な書きかたでは、定期預金なのか普通預金なのかが判断できず、名義変更の手続きができません。一文字でも間違っていると書き直しになる場合があるため、手元に通帳を用意して、内容に誤りがないかを慎重に確認しながら作成を進めましょう。

4-2.金額の代わりに全額や一切の権利という文言を使う

預貯金の分配については、「金〇〇円」という数字ではなく、全額や一切の権利という言葉を使って、その口座にあるすべての財産を引き継ぐ意思を明確にするのがポイントです。

包括的な表現をしておくと、時間の経過によって残高が増減した場合でも、その時点でのすべての預金が対象となるため、修正の手間がかかりません。あとから金額のズレを指摘されてトラブルになるのを防ぐためにも、包括的な表現を選んで記載しておきましょう。

4-3.解約までにつく既経過利息も記載する

預金の元本だけでなく、相続発生日から解約手続きが完了する日までの間に発生する既経過利息も、誰が取得するかを忘れずに明記しましょう。

銀行の手続きでは、解約にともなって支払われる利息も遺産の一部とみなされるため、既経過利息の記載が漏れていると改めて協議が必要になり、払い戻しが遅れる原因になります。既経過利息を含むという一文を添えるだけで、余計な手間を省いてスムーズに手続きを完了させられます。

4-4.万が一の漏れに備えて包括条項を入れておく

将来もし新たな財産が見つかった場合に備えて、記載のない財産は〇〇が相続するといった内容の包括条項を最後に設けておくのが安心です。この取り決めがない状態であとからへそくりや別の口座が出てくると、その財産について再び相続人全員で話し合い、別の協議書を作り直さなければなりません。

一度の話し合いですべての手続きを終わらせるために、予期せぬ財産の扱いもあらかじめルールを決めておくのがポイントです。

5.預貯金の遺産分割で失敗しないためのポイント

預貯金の遺産分割協議書を作成するときは、金額そのものではなくどの口座を誰が継ぐかを明確にするのが重要なポイントです。あとから銀行窓口で「これでは解約できません」と断られないように、実務で通用する正しい書き方のコツをしっかり押さえておきましょう。

  • 残高は変動するため具体的な金額ではなく全額や割合で書く
  • 解約手続きまでに発生する既経過利息の受取手を明記する
  • 銀行名・支店名・口座番号・種類は正確に特定する
  • 代表相続人がまとめて払い戻しを受ける形にする

ひとつずつご紹介します。

5-1.残高は変動するため具体的な金額ではなく全額や割合で書く

預金の残高は相続が発生したあとも利息や手数料で変動するため、具体的な金額は書かずにすべての預貯金や〇分の1の割合といった表現で記載するのがポイントです。仮に100万円と金額を指定して書くと、解約時に残高が100万1円だった場合、残りの1円を誰がもらうのか決まっていないため手続きがストップ擦る場合があります。

金額を特定しない書きかたにしておくと、多少の増減があっても書き直しをせずにスムーズに解約や名義変更が進められます。

関連記事:遺産分割協議書は手書きでも有効!手書きの手順や記載例・注意点を解説

5-2.解約手続きまでに発生する既経過利息の受取手を明記する

預金元本だけでなく、解約する日までに発生する既経過利息も誰が取得するのかを遺産分割協議書に明記しておきましょう。銀行実務では、既経過利息の受け取り手が決まっていないと、元本部分の払い戻し手続きまで保留にされる場合があります。

元本および解約時までに付与される利息を含むすべてを取得するといった一文を加えておくだけで、細かな計算をせずに手続き全体を問題なく完了させられます。

5-3.銀行名・支店名・口座番号・種類は正確に特定する

どの財産を指しているのかを第三者が見てもわかるように、銀行名や支店名、口座の種類、口座番号は通帳の記載通りに一字一句正確に書き写すのが大切です。たとえば「〇〇銀行の預金すべて」といった曖昧な書きかたでは、ほかの支店に隠れた口座があった場合にトラブルの原因になったり、銀行側で特定できず手続きを拒否されたりするリスクがあります。

普通預金か定期預金かの種別も含め、対象となる口座を特定できる情報は漏れなく記載しましょう。

5-4.代表相続人がまとめて払い戻しを受ける形にする

銀行手続きを簡略化するために、相続人のうち代表相続人を決めて、その代表者が金融機関で払戻し手続きを進める方法が取られることがあります。ただし、代表相続人が受け取ってから分配する形は、状況によっては代償分割(特定の相続人が財産を多く取得し、代償金を支払う)に当たる場合もあれば、単に「代表者が一旦受領して協議内容どおりに分配する」実務上の段取りにとどまる場合もあります。

もし、特定の相続人が不動産などを取得し、その代わりに他の相続人へ金銭を支払う代償分割を採るのであれば、協議書に「代償分割であること」「代償金の金額・支払期限」などを明記しておくことが重要です。記載がないと、事情により贈与と扱われるリスクが指摘されることがあります。

関連記事:代表相続人が遺産を分配しないときに考えられる理由と対処法

6.まとめ

遺産分割協議書に預貯金の金額を書かないと法的に無効になるわけではなく、むしろ利息等で残高が変動し得ることを踏まえると、口座を特定したうえで「全額」などの包括的な表現で取得者を定める方法は、実務上よく用いられています。

ただし、金額を書かない場合は相続人間で不信感が生まれやすい側面もあるため、必要に応じて残高証明や通帳写しを共有したり、財産目録を作成して説明したりするなど、合意形成の工夫が重要です。また、代表者が払戻しを受けて分配する場合でも、実質が代償分割に当たるときは、代償金条項を明確に記載しておくと安心です。

当事務所では、銀行や法務局で「書きかたが違う」と断られないための正確な遺産分割協議書の作成から、その後の預金解約・名義変更まで、複雑な相続手続きをトータルでサポートしております。「金額を書かずに作成したい」「家族が揉めないように進めたい」とお考えの方は、ぜひ当事務所の初回無料相談をご活用ください。

監修者 池部 翔司法書士・行政書士

司法書士法人・行政書士鴨川事務所 代表

相続手続きは複雑で、自己判断により重大なトラブルを招くことがあります。当事務所では、丁寧に相談を受けたうえで、専門知識を活かし、最適な解決策の提案から実行までをサポートしています。

京都司法書士会・京都府行政書士会所属

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