手書きの遺言書の書き方と注意点|遺言書のテンプレートや例文も紹介
知らなかった借金が発覚した場合でも相続放棄が可能なケースと対処法
2026.04.30

「被相続人に借金があった場合、相続人はどこまで責任を負うのかを知りたい」
「借金の存在を知らずに相続した場合の対処法を知りたい」
「相続放棄の期限や期限を過ぎた場合の対応を理解したい」
親族が亡くなり遺産を相続した方のなかには、借金の存在をまったく知らず、上記のようなお悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。
借金の存在をあとから知った場合でも、一定の条件を満たせば相続放棄が認められます。
本記事では、借金の相続をあとから知った場合でも放棄は可能なケースと放棄する方法を解説します。
相続放棄の期限を超過した場合や、期限を過ぎた場合でも相続放棄が認められるケースもご紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
1.知らなかった借金をあとから知った場合でも相続放棄は可能?
知らなかった借金の存在をあとから知った場合でも、一定の条件を満たせば相続放棄が認められます。相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産もすべて受け取らないという選択肢のことです。
ただし、原則として相続放棄が認められる期限が定められているため、発覚したタイミングと対応の速さが相続放棄の可否を左右します。
まずは相続の仕組みと相続放棄に関する期限を、正しく理解しておきましょう。
1-1.遺産相続の仕組み
遺産相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産や借金を、法律で定められた相続人が引き継ぐ仕組みです。プラスの財産(預貯金・不動産など)だけでなく、借金・ローン・保証債務といったマイナスの財産もすべて相続の対象となります。
相続が発生すると、相続人は以下の3つの選択肢のなかからいずれかを選ばなければなりません。
- 単純承認(すべて引き継ぐ)
- 限定承認(プラスの範囲でマイナスを引き継ぐ)
- 相続放棄(すべて放棄する)
どの選択をするかによって、そのあとの生活や財産状況が大きく変わるため慎重に判断しましょう。
1-2.知らなかった借金の相続放棄が可能な期限
知らなかった借金の相続放棄ができる期限は、原則として相続の開始があったのを知った日から3カ月以内です。これを熟慮期間と呼びます。熟慮期間の3カ月間に家庭裁判所へ申述をおこなわないと、自動的に単純承認したとみなされます。
なお相続の開始を知った日とは、被相続人の死亡を知った日が基本ですが、借金については発覚した日が起算点となる場合もあります。
熟慮期間を過ぎると原則として取り返しがつかないため、早急な対応が急務です。
2.熟慮期間を過ぎた場合でも知らなかった借金の相続放棄が認められるケース

3カ月の熟慮期間を過ぎていても、特別な事情がある場合は例外的に相続放棄が認められる場合があります。すべてのケースで認められるわけではありませんが、以下の条件に当てはまる場合は家庭裁判所への申立てをご検討ください。
- 借金の存在をあとから知る
- 財産がないと信じていた
- 遺産調査が著しく困難である
- 借金発覚から3カ月以内に動く
- 家庭裁判所に特別事情を訴える
ひとつずつ見ていきましょう。
2-1.借金の存在をあとから知る
相続放棄の期限は相続の開始を知った日から起算されますが、負債は借金の存在を具体的に知った日が起算点となると判断された裁判例があります。被相続人の死亡当時には借金の存在を知らず、あとから督促状や債権者からの連絡で発覚した場合、そこから3カ月以内であれば相続放棄が認められる場合があります。
ただし、個別の事情によって判断が異なるため、必ず専門家に確認しましょう。
2-2.財産がないと信じていた
被相続人に財産がないと信じていたために相続放棄の手続きをしなかった場合、その信頼に正当な理由があれば例外的に放棄が認められる場合があります。最高裁判所の判例では、財産も借金もないと信じていたことに相当な理由があると認められ、借金発覚の日から3カ月の熟慮期間が再度起算された事例もあります。
「どうせ財産がないから放棄しなくていい」という判断が今後のリスクになることもあるため、財産の有無は慎重に確認しましょう。
2-3.遺産調査が著しく困難である
被相続人の財産状況が複雑で遺産調査に著しく時間がかかる場合は、家庭裁判所に熟慮期間の伸長(延長)を申請することができます。申請が認められると、3カ月の期限を延ばして調査を続けることが可能です。
ただし、伸長の申請は3カ月の期限が切れる前におこなう必要があります。被相続人の財産状況が不透明な場合は、早めに熟慮期間の伸長を申請しましょう。
2-4.借金発覚から3カ月以内に動く
借金の存在を知らず期限超過後に発覚した場合でも、発覚した日から3カ月以内に家庭裁判所へ申述すると、相続放棄が認められる場合があります。
発覚から時間をおけばおくほど申立ての説得力が薄れ、家庭裁判所に認められにくくなる場合があるため、督促状や通知が届いた日付をきちんと記録し、すぐに専門家へ相談する準備を整えましょう。
2-5.家庭裁判所に特別事情を訴える
期限超過後の相続放棄は、家庭裁判所に対して「なぜ期限内に放棄できなかったのか」という特別な事情を説明する上申書を提出しなければなりません。
単に知らなかったと主張するだけでは不十分で、知らなかったことに正当な理由があるのを書面と証拠で具体的に示す必要があります。家庭裁判所の判断は個別の事情によって異なるため、必ず司法書士や弁護士のサポートを受けながら進めましょう。
3.知らなかった借金を相続放棄する方法

借金の存在をあとから知った場合に相続放棄を申立てるには、手順を正確に踏むのが重要です。書類の準備から申立てのタイミングまで、以下の手順を確認してください。
- 借金を初めて知った日を特定する
- 督促状など発覚の証拠を保管する
- 遺産の処分や借金の返済を一切断つ
- 期限を過ぎた理由を綴る上申書を作る
- 発覚から3カ月以内に申立てを終える
- 受理実績が豊富な専門家に相談する
ひとつずつ見ていきましょう。
3-1.借金を初めて知った日を特定する
相続放棄の申立てに際して重要な情報のひとつが、借金の存在を具体的に知った日です。この日付が、熟慮期間の起算点となる場合があります。
督促状の受け取り日・債権者からの電話を受けた日・弁護士から通知が届いた日など、具体的な日時を明確にしましょう。日付が曖昧だと家庭裁判所への申述で説得力が落ちます。関係する日付はすべてメモや記録に残しておくのが大切です。
3-2.督促状など発覚の証拠を保管する
借金の存在を知ったことを証明する証拠として、督促状・通知書・内容証明郵便などの書類は必ず手元に保管してください。これらは家庭裁判所への上申書に添付する証拠となります。
証拠が不十分だと期限内に知っていたはずだと判断されるリスクがあるため、発覚に関わるあらゆる書類を捨てずに保管しておきましょう。
3-3.遺産の処分や借金の返済を一切断つ
相続放棄を検討している間は、被相続人の遺産を処分したり借金の一部を返済したりしてはいけません。こうした行為をおこなうと、法律上は単純承認とみなされ、相続放棄が認められなくなります。遺品の整理・預金の引き出し・不動産の売却なども同様にNGです。
「少しくらいなら大丈夫だろう」という判断があとあと取り返しのつかない結果につながる点を、しっかり認識しておきましょう。
3-4.期限を過ぎた理由を綴る上申書を作る
期限内に相続放棄をおこなえなかった理由を説明する上申書(事情説明書)を作成します。上申書には、借金の存在を知らなかった事実・発覚した経緯・正当な理由を具体的かつ明確に記載する必要があります。単なる言い訳ではなく、客観的な事実を時系列に沿って整理しましょう。
上申書の内容が相続放棄の可否を左右するため、司法書士や弁護士に作成のサポートを依頼するのがおすすめです。
3-5.発覚から3カ月以内に申立てを終える
借金の存在を知った日から3カ月以内に、家庭裁判所へ相続放棄の申述を完了させてください。3カ月を過ぎると、例外的な救済を受けるのも難しくなります。
申立てに必要な書類(申述書・戸籍謄本・上申書など)を揃えるには時間がかかるため、発覚した段階で直ちに準備を始めてください。
3-6.受理実績が豊富な専門家に相談する
期限超過後の相続放棄は、通常の放棄よりも家庭裁判所に認められるハードルが高く、対応経験が豊富な専門家のサポートが欠かせません。司法書士や弁護士のなかでも、相続案件・とくに期限超過後の放棄申立ての受理実績がある専門家を選びましょう。
実績のある専門家である場合、上申書の作成・証拠の整理・裁判所とのやり取りまで一貫してサポートしてもらえます。1人で抱え込まず、早めに専門家へご相談ください。
4.相続でやってはいけないNG行動
相続の手続きをおこなっている際に特定の行動をとると、相続放棄ができなくなる場合があります。以下で紹介するNG行動は絶対に避けてください。
- 遺産を勝手に使い込む
- 遺品を処分・売却する
- 借金の一部を返済する
- 預貯金の名義を書き換える
- 3カ月の期限を徒過する
- 内容不明な書類に実印を捺す
ひとつずつ見ていきましょう。
4-1.遺産を勝手に使い込む
被相続人の預貯金や現金を勝手に使い込む行為は、単純承認とみなされるNG行動です。「必要な生活費だから」「少額だから大丈夫」という判断でも、法的には遺産を処分した行為として扱われる場合があります。
単純承認が成立すると相続放棄が認められなくなるため、口座から引き出した時点で取り返しのつかない結果を招くリスクがあります。遺産には手をつけず、専門家に相談してから方針を決めるのが大切です。
4-2.遺品を処分・売却する
亡くなった方の遺品を処分したり売却したりする行為も、遺産の処分とみなされ単純承認につながる場合があります。家財道具・貴金属・車・不動産など、価値のある遺品を勝手に動かすことは避けてください。
「使わないものだから捨てた」「形見分けのつもりだった」という意図であっても、法的判断は行為の内容でおこなわれます。遺品の整理をおこなう前に、必ず相続放棄の方針を固めてから動くのが重要です。
4-3.借金の一部を返済する
被相続人が残した借金を少額でも返済すると、相続を承認したとみなされる場合があります。「督促されたから」「債権者から連絡が来たから」といった理由で安易に支払いに応じてはいけません。
返済をする前に相続放棄の選択肢を検討し、専門家に相談するのが安全です。返済してしまったあとでは相続放棄が認められなくなる場合があるため、借金に関する連絡が来た段階で専門家へご相談ください。
4-4.預貯金の名義を書き換える
被相続人の預貯金口座の名義を相続人の名前に書き換える行為は、遺産を自分のものとして受け入れる意思表示とみなされる場合があります。そのため、名義変更は単純承認の根拠となり、相続放棄の申立てができなくなるリスクがあります。口座の解約・払い戻し手続きも同様です。
相続放棄を検討している段階では、金融機関での手続きを一切おこなわないようにしてください。
4-5.3カ月の期限を徒過する
相続放棄の熟慮期間である3カ月を何もせずに過ごすのは、最も避けるべきNG行動のひとつです。「財産がないから放棄しなくていいだろう」「まだ時間があるから大丈夫だろう」という思い込みが、あとから発覚した借金の引き受けにつながります。
期限が迫っているにもかかわらず調査が終わっていない場合は、家庭裁判所に期間の伸長(延長)を申請できます。放置せず、早い段階で専門家に相談してください。
4-6.内容不明な書類に実印を捺す
相続手続きのなかで、内容をよく理解していない書類に実印を押すのは絶対に避けてください。遺産分割協議書・相続承認書・金融機関の払い戻し依頼書などに署名・捺印すると、その内容に同意したことになります。
知らないうちに単純承認や借金の引き受けを意味する書類に署名するリスクもあるため、不明な書類が届いた場合はその場で判断せず、必ず司法書士や弁護士に内容を確認してもらってから対応しましょう。
5.相続で借金の有無を確認する方法

被相続人が借金を抱えていたかどうかは、自分で調べる方法があります。見落としを防ぐためにも、以下の方法を組み合わせてご確認ください。
- 自宅内の遺品や郵便物を精査する
- 信用情報機関へ開示請求をおこなう
- 不動産の登記簿から担保を確認する
- 金融機関で取引履歴を取り寄せる
- 税金や社会保険料の滞納を調べる
- 督促状や督促メールの有無を洗う
ひとつずつ見ていきましょう。
5-1.自宅内の遺品や郵便物を精査する
被相続人の自宅に残された遺品や届いている郵便物を丁寧に確認するのが、借金を発見するひとつの方法です。金融機関からの通知・クレジットカードの明細・ローンの契約書・督促状などが隠れている場合があります。
また、引き出しのなか・押し入れの奥・スマートフォンのメールやアプリ内にも重要な情報が残っている場合があります。
処分や整理の前に、すべての書類や郵便物をひとつひとつ確認しておきましょう。
5-2.信用情報機関へ開示請求をおこなう
被相続人が生前に借り入れたローンやクレジット債務の情報は、信用情報機関に記録されています。CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターの3機関に対して、相続人が開示請求をおこなうと、被相続人の借金の全体像を把握できます。
開示請求には、被相続人と相続人の関係を証明する書類(戸籍謄本など)が必要です。
信用情報機関への開示請求は、隠れた借金を見落とすリスクを減らせる有効な方法です。
5-3.不動産の登記簿から担保を確認する
被相続人が所有していた不動産に抵当権(担保権)が設定されている場合、借金が残っている場合があります。
法務局で取得できる登記簿謄本(全部事項証明書)を確認すると、抵当権の有無と債権者の情報を調べられます。住宅ローンやビジネスローンなどが未返済の場合、登記簿上に記録が残っています。
不動産を相続する場合は、必ず登記簿謄本を確認しておきましょう。
5-4.金融機関で取引履歴を取り寄せる
被相続人が口座を持っている金融機関に対して、取引履歴の開示を依頼すると借入れの有無を確認できます。通帳には記載されていない自動引き落とし・ローン返済・消費者金融への送金などが履歴に残っている場合があります。
借金の有無を把握するためにも、被相続人が利用していた金融機関はすべてリストアップして確認しておきましょう。
5-5.税金や社会保険料の滞納を調べる
税金(所得税・固定資産税・住民税など)や社会保険料の滞納も、相続財産に含まれるマイナスの借金となります。
市区町村役場や税務署に問い合わせると、被相続人名義の税金や保険料の未納状況を確認できます。滞納が長期化していると延滞税が加算されており、想定外の金額になっている場合も。
税金の滞納は優先的に回収される場合が多いため、早めの確認と対応が重要です。
5-6.督促状や督促メールの有無を洗う
被相続人のもとに届いた督促状・督促メール・SMSなどを徹底的に洗い出すと、借金の存在を把握できます。郵便物だけでなく、スマートフォンや自宅のパソコンに届いたメール・通知も確認対象です。
消費者金融・クレジット会社・個人からの貸付など、公的記録に残りにくい借金もこの方法で見つかる場合があります。
こうした情報を見落とすと、相続後に突然請求が来るリスクがあるため、あらゆる通信手段を丁寧に確認しておきましょう。
6.まとめ
被相続人の借金をあとから知った場合でも、発覚した日から3カ月以内に適切な手続きをおこなうと、例外的に相続放棄が認められる場合があります。
一方で、期限を過ぎて単純承認が確定すると、借金の返済義務を引き受けたうえに差し押さえが始まる深刻といったリスクが生じます。遺産の処分・借金の一部返済・内容不明な書類への捺印といったNG行動は、相続放棄の機会を失わせることになるため絶対に避けてください。
借金の有無は信用情報機関・登記簿・郵便物などを通じて確認できます。不安を感じたら、早めに司法書士や弁護士など相続の専門家に相談するのがおすすめです。
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